9 つの朝顔 (ページ3)

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orange ページ3

「あ、えと…コーヒー、お願いしますっ！！」
『ふふっ、はい、520円になります』
「はいっ！！」
『いつも、ありがとうございます』
「でえっ！？あっえと…」
『あ、ごめんなさい。最近よく、買いに来てくれるから』

イントネーションの感じ、関西の方…ですか？

顔を覗き込みながら、方言かわいいですよね、と
フワッと笑う彼女。
君の方が何倍も可愛ええで、ほんまに。

一ヶ月前からよくテイクアウトするお店。
たまたま仕事の前に入って
この子がこんにちはって笑ってくれた瞬間。
胸がとくんって鳴った。…いや、ほんまやねんて。

確かに俺、惚れやすいと思う。
街中で声かけられたら好きになる！みたいなこと
テレビや雑誌で公言するくらいには
結構チョロいとは思うねんけど、なんかちゃうんよ。

…しかも、最初のこんにちはだけで恋に落ちるとか
ほんまもんの恋愛漫画やで。さっくんが喜びそうな展開。

可愛いとか、タイプとか
そんな簡単な事じゃ言い表せれんくて。
最初に出会った日、仕事中もこの子のことばっかで
名前なんやろ、とか、好きな物なんやろ、とか、
いやその前に何歳なんやろ…幼く見えたな、とか考えすぎて
康二、集中しなさいって照兄に小突かれた。

あれから頻繁に通うようになって
俺、まさかの本日、認知確定やて。

おまたせしました、と渡されたカップには
他の人が受け取るものには無い、可愛らしいラクガキ。

''お仕事、頑張ってください''

その文字と、上手に書かれたニコちゃんマークの絵。

振り返って、目が合って
窓から差し込む夕日が、あの子の笑顔を照らしてて。

「……あかんな、これ」

次に会えた時の事、もう考えてしまうくらいは重症やもん。