orange ページ19
『わー!!!チューした!!!!』
「あんなあ、少し落ち着いて見いや」
『だって推しのキスシーンは貴重だよ需要だよ最高だよ』
「そのタイプ、中々おらんと思うねんけど」
康二くんのおうち。相変わらず何度来てもオシャレな家。
そして今大画面に移るのは、健ちゃんのロマンチックなキスシーン。
相手の腰を寄せてさらに口付ける健ちゃんの姿は、それはそれは素敵で。
『…さいっこう、大人の恋愛、色気、たまんない』
「コラコラ、変態がバレてんで」
『隠してないからいいよ』
「いいんかい」
思わず手をぎゅっと握りしめながら見入ってしまう。
当の本人は恥ずかしいのか、携帯をいじってみたり、まったく弾いてないギターを弄んでみたり、カメラを触ってみたり。
ソファに腰かける彼の足の間に座っている私には、見ずともその落ち着かない様子が伝わってくる。
『…康二くん、もしかして恥ずかしい?』
「当たり前やろ、キスシーン見られてんねんもん」
『でもこれはドラマだからーって、言ってたじゃん』
「そやけどぉ!彼女は、別やん」
顔だけそちらに向けると、どこかしゅんとした彼の姿。
…ほんと康二くんって分かりやすくて、可愛い。
『あのさ、康二くん』
「やめて、言わんといて」
『嫌だ、言います』
今度は体ごと振り返って、彼の頬を両手で掴んだ。
『…ヤキモチ、やいてほしかった?』
プクーっとふくらませる頬で遊ぶと、その手を掴まれてぎゅっと握られた。
「もうちょっとええんちゃう?ワガママ言っても」
『ワガママ?』
そういう彼は、なんだか少し悲しそうで。
どうしてそう思うの?と聞くと、ゆっくりと口を開いた。
「…もちろん仕事やで?仕事やけど、他の人に触ってるわけやんか」
『うん、そうだね』
「それに対して、嫌だとか、やめてってファンの子は言うねん」
『…うん』
「口に出さんだけで、Aが1番思ってるんやないかなって」
遠慮がちにこちらを見つめる。
…なんだ、そんなこと、心配してくれてたんだ。
そんな優しい彼の姿にきゅんとして、思わずキスをした。
「へっ、なに」
『あはは、びっくりしてる』
「急なんやもん、なんで!?」
康二くん、あのね。
『私、康二くんが思ってる以上に、康二くんが好きだよ』
そんなあなたに、まっすぐぶつけた言葉。
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作者名:蒼 | 作成日時:2024年2月25日 20時