9 つの朝顔 (ページ14)

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「最後にさ、お願い」
『…なあに？』

その声が好きだ。甘くて、優しくて。
俺を呼ぶ、俺の声に応える、その声が。

「……最後に、キスしてくんない？」

これで全部、終わりにするから。

彼女の冷たい手が頬を撫でて、
暖かい感覚が唇に伝わった。
まるで付き合いたての少年少女が
初めてするようなキス。

ゆっくり離れた彼女の瞳に、涙が揺れている。
どうして、こうなったのか…俺の、せいか。

『だいちゃん…、さようなら』
「ねえっ…！」

俺の呼び掛けには答えず
バタンと車の扉を閉めたあと、振り返ることも無く
暗闇の中に消えていく背中。

扉の閉まる直前、最後に聞こえた
''大好きだったよ''の言葉に
俺はただ、ハンドルを強く握るしか出来なくて。

_____運転、よろしくぴーまんであります！
_____んにゃー！！それ！！俺の真似だろ！！
_____ばれた？大ちゃんの初運転、楽しみだな

信じあって、愛し合って。
確かに間違いじゃなかったお互いの気持ちと
もうそれが手遅れだと知らせるこの空間。

「……大好きだよ、俺も」

簡単な最後には、お似合いの2人。
どうかこの先、彼女に
俺以上に愛せる人が、現れないでほしいと
心底最低なことを思いながら、車をまた、走らせた。

(離れたくないって、今すぐ俺の所にかえってきてよ)
(離したくないって、今すぐ私の所に戻ってきてよ)

image song : ミッドナイト・トレンディ