9 つの朝顔 (ページ1)

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昔から、恋愛下手ではない方だと思う。

もう子どもでもないからいちいち嫉妬したり
連絡が無い事に腹を立てたり、そういうことも無い。

彼はいわゆる''自由人''だ。

干渉されすぎることを嫌うし、誰かに執着することも無い。
今更それに対して不満も何も無いけど
女心は複雑なもので、自分に対してだけは
……何か、特別な感情を持っていてくれてもいいじゃん、と
理不尽にそう考えてしまう。

『ねえ、辰哉くん』
「ん〜？」

ゲーム画面を見ながら、甘ったるい声で返事する彼。
こんなダル着の眼鏡姿でさえ絵になってしまうくらい
超絶売れっ子グループの最年長。

彼とは高校の同級生で、
あの頃は関わることは無かったけど
同窓会で再開したのがきっかけで
彼と似た夢を半ばで諦めて、普通のOLと化した私に対して
「じゃ〜俺の横でさぁ、俺の事支えてよ」と
顔色ひとつ変えずに言ってのけた彼。

後々、同じ高校の後輩だった照くんに話を聞くと

「ふっか、けっこー前から好きって言ってたよ」

って言われて。
キラキラしてる彼に好意を寄せていたのは
少なからず、嘘ではなかったので
私もすんなり承諾して、付き合い始めてかれこれ半年になる。

『明日、飲みに行くんだけど仕事遅いんだっけ』
「んーや、明日は割と早かったよ」
『そっか、じゃあご飯作って置いとくね』
「そんな遅くなんの？めずらしーね」

カチャカチャ、と動かしていたコントロールを止めて
メガネの奥から覗く目と、視線が合う。

「いつもの職場の同期ちゃんたちー？」
『あ、いや、翔太くんと』
「しょ………え、どゆこと？」

ガタッと動いた机にはじめて
彼の、少し動揺した姿が見えた。