午後の部、第一曲 ページ8
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一人、ただ車を走らせていた。
この道路だって、普段であれば車通りの多い賑わいある場所で。
…だが、どうだ？この状況は。
「…本当に、嫌気がさすほど静かだな」
静かな空間は確かに落ち着くけれど、それがずっと続けばかえって余計なことまで考えてしまって仕方がない。
金髪に赤眼の男___グルッペンは、微かにハンドルを握る力を強めた。
*
街から人が消えるようになったのは、一ヶ月前からだったように思う。…いいや、もしかしたらそれより以前から発生していたのかもしれないが。
相次ぐ有名人の失踪が話題となり報道され、私の家族も、友人も、俺の妻も…なんて。警察へ捜索届けを出す人が急増していることが発覚した。
そんな物騒な話を…2週間くらい前、だったか。あいつらとも話していたのだ。
「怖い話よな。グルさんの親父さんもおらんくなったんやろ？大丈夫なんか…？」
「見てたドラマ中止になっためう」
「確かに。再放送ばっかじゃない？最近」
「こっちもサッカーの試合無くなったで」
「街コンにも人来んちゃう？エミさん」
「ゾムさんはなんで俺に振る！？」
「バイクで走っとっても、なんか人少なくて不気味っすわ」
などなど。他の奴らも反応はそれぞれだったが、皆一様に不安げというか、そんな印象を感じた。
とりあえずまた明日話そうか、といつもと変わらず無駄に長くなってしまった話を打ち切り通話を切って。
その日は仕事もあって疲れていたから、ベットに倒れ込んでぐっすりと寝て____
___そして次の日の通話に、
誰一人として集まることはなかった。
始めはなにかあったのか？と思ったものの、誰かしらくるかもしれないと1時間半粘って、流石に焦って家を出た。
取り敢えず近いトントンの家まで車を走らせ、インターホンを鳴らしても無反応。スマホから電話をしても駄目で、次は、次は…と。
結局全員の行方がわからず、途方に暮れて。
その日は前日とは違う疲労感と…多分、悲壮感でぐったりと眠りについた。
あれからこうして車で人を探しているものの、出会えた人は、たったの一人。
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作者名：森樂 | 作成日時：2021年1月24日 14時
