【短編】アンコール【gr】 (ページ4)

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第三曲ページ4

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運動神経は抜群、でも少し人見知りなゾムに。そんな彼をよく揶揄っていたシャオも居て。
2年生にあがれば後輩もできたよなあ…。シッマへの対応が謎に手酷いショッピに、あと演技が上手いチーノ。
後輩でもなければ生徒でもないけど、よく一緒にいた人たちもいた。物知りだけどよく滑るエミさんに、名前をそのまま正確に写したみたいな兄さんも、それからふわふわとしてて話をしていて心地の良いペ神。

ああっそうだ、ロボロも居たね！見えてなかったわ！…なんて、いつものおふざけも。
最初に仲良くなったのは、確かトントン。クラスが一緒になって、たまたまゲームの趣味が同じで。ノリが良くて、すぐに友達になったのを覚えてる。

全員奇跡的に同じ高校に進学したものの、高校卒業した後に進路で皆バラバラになった。
けど、最近会ったような感覚がある。

……駄目だな、さっきから。
記憶が混濁していて、朧げだ。

鍵盤にそっと手を置いく。
記憶は曖昧でも、今置かれている状況が、何一つわからなくても。
今まで弾いた楽譜の全てはしっかりと感覚として覚えていて、頭の中に音階が浮かぶ。

…ああ。

ただ、全てが楽しい記憶ではなかった。

習い事の先生は素敵な方だったが、ピアニストだった母は昔から一度だって、私の演奏を褒めてくれることはなかった。

素晴らしいじゃない！とか。もうこれだけ弾けたの？まぁ、すごい！とか。たくさん練習したのね、とか。

まるで聖母のように美しく微笑んで、我がことのように喜んでくれた先生は、今でもよく覚えているけれど。
彼女はピアノのよく似合う清楚な人で、とても綺麗だったから。

…もちろん、母も綺麗だった。
でもそれは上辺だけで、少なくとも家にいるときの母は、ピアニストという姿とは似ても似つかないようなもの。

先生とは真逆のことを言う母が怖くて、それから、少し悲しかった。レッスン室と家の…母と先生がかけてくれる言葉の寒暖差に、多分やられたんだと思う。
だからグランドピアノは、習い事ごと中学入学を機に離れてしまった。先生は、少し寂しそうだったな。