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コリウス ページ15

レイside



レイ「A」



『あ、レイ!やっと話せたね。朝から子供たちに囲まれちゃって』



鬼ごっこが始まり子供たちが散るとそれまで離れていたレイが隣に腰を下ろす。



いいなぁ、エマたちは。自由に走り回れて。



Aがそういった日から、自由時間、木の下に座るAの隣は俺の特等席になった。


Aが一人で寂しくないように。


手を取り連れ添って歩くのも俺。



急に雨が降った日は急いで傘を取りに走って。



2人で雨の中話をしながら歩いた。




足は不自由だった。



辛いことも大変なことも沢山あった。



それでも、2人で歩いたあの僅かな時間が、俺にとってはささやかで、十分な幸せだった。



レイ「お前、明日にはいなくなるんだよな」



『そんなこと言うなんて、寂しいの?』



少しからかったつもりが、口をつぐんでしまった俺を見てAは『あら』と驚いたように目を丸くする。



レイ「里親決まって、嬉しいか?」



『勿論!こんな私を子として引き取ってくれるんだもの。きっと優しい人たちね』



レイ「そう、か...そうだな」



『歯切れ悪いね。おめでとうって、言ってくれないの?』



言えてたまるか、そんなもの。



喉まで出かかった言葉をぐっと呑み込む。




そうだ。


幸せなことだ。



孤児である俺たちを、Aからしたら足が不自由な自分を引き取ってくれるのだから。



ここが本当の孤児院であるならば。



明日なのは驚いたが、かえってそれで良かったと思う。


俺のためにも、Aの為にも。



死を待つ時間は短いに越したことはないし、俺の気が変わる前に。



エマやノーマンが秘密を知ってからAを見送るよりも、俺一人苦しむ方が良い。



俺一人責められる方が良い。




レイ「まぁ、お前がいなくなるのは寂しいな」



『珍しく素直だね』



正直言って、足が不自由なAが最年長まで生き残れたこと自体驚きだった。


昔出荷された6歳の子。

丁度その日は雨上がりで、急いでいたら転んで足に擦り傷を作ってしまった。

それだけでその子のランクは並から下へ落とされてしまった。



Aの頭脳が残すだけの価値があったのだろうか。


目の前の大切な幼馴染みの行く末が「死」であることを知りながら、「おめでとう」など言えたものではなかった。




『海行けるかな?見てみたいな〜!』




恋の死体が本物の死体になるなんて、皮肉だな。





コリウスの花言葉
《叶わぬ恋》

ワスレナグサ→←キンセンカ



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アイリス(プロフ) - アイさん» ありがとうございます!頑張ります! (2021年3月2日 7時) (レス) id: b185c217cf (このIDを非表示/違反報告)
アイ(プロフ) - すごか面白くて毎回楽しみにしています!これからも頑張って下さい! (2021年3月2日 3時) (レス) id: 2782a43946 (このIDを非表示/違反報告)
チッピとデーラ - なるほど、「無人の贖罪先」ですか!そういう事だったんですね!納得です。 (2021年2月10日 22時) (レス) id: 4102ef7177 (このIDを非表示/違反報告)
アイリス(プロフ) - ありがとうございます!「無人の贖罪先」、という言葉を使いたくてそう表現させていただきました。更新頑張ります! (2021年2月9日 23時) (レス) id: b185c217cf (このIDを非表示/違反報告)
チッピとデーラ - はじめまして!作者様の作品を読ませていただきました!擦り傷のように消えてはくれない、という文章で、スキマスイッチの雫という歌を連想して感激しました!歌詞とぴったりすぎて!続きを早く読みたい気持ちでいっぱいです。更新頑張ってください!応援しています。 (2021年2月9日 22時) (レス) id: 4102ef7177 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アイリス x他1人 | 作成日時:2021年1月31日 10時

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