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電話に出る事に躊躇している俺を見て、
「電話出ないの?早く出ないと切れちゃうかもよ〜?」
「そしたらムネの印象は最悪な男に変わるだろうなぁ〜笑」
言い方がとてもウザかったが的確に痛いところを突いてきた。それだけは嫌だ。Aさんに、嫌われたく無い。周りからの視線が痛かったが、意を決して緑のボタンを押した。
「…もしもし?」
『あっ、もしもし?村上さんですか?』
電話に出ると心地よい声が聞こえた。最近はチャットでしか会話していなかったから、声を聞くのは久しぶりな気がする。
「うん、そうだけど。どうしたの?」
『いや、あの大した事じゃ無いんですけど。あの、今テレビ見てて、そしたら村上さんの特集がやってたので、吃驚してつい。』
もしかして彼女が見ているテレビって…
「…もしかして、○チャンのやつ?」
『そうです!たまたまテレビつけたらやってて。』
やはり、今自分達が見ているのと同じだった。
「見てくれてるの?」
同じ時間に同じチャンネルを見ている事が嬉しくて、つい聞いてしまった。次の瞬間、
「おいムネ、スピーカーにしろ。俺達も聞きたい。」
「…は?あっちょっと!」
「静かにしろバレるぞ。」
と言われると同時に、ポチリとスマホ画面のスピーカーボタンを押される。異議を唱えたかったが、もしここで騒がしくすると絶鬼さんにまで聞こえることになる、そしてスピーカーにしている事がバレてしまう。我慢しろ、俺。
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作者名:吹雪鬼 | 作成日時:2023年5月3日 14時