昔の事はそうめんと一緒に水に流そう 9 ページ32
「声変わり……したんだな」
思わず振り向いて名前を呼んでしまったのを繕おうと、龍征の声に聞き覚えがなかった理由を口にした。
あれほど避けていた相手なのに自然に喋れたのは、それだけ前の龍征の声と今の龍征の声がかけ離れていたからだと思う。
龍征の声は一ヶ月半前より確実に低くなっていて、重みのあるはっきりした声になっていた。
たった一ヶ月半の間に、別人と聞き間違うほどに。
そんなに喋ってなかったんだなと少し寂しさのようなものを感じ、何を言おうとしたのかは分からないけれど口を開いた。
しかし、それは言葉になる前に遮られる。
「__ごめん」
龍征はそう言って頭を下げた。
……やっと聞けたよ。
「……何に関してだ?」
「ブレスレット壊したのとか、なかなか謝れなかったとか、なんか色々と全部だ!!」
きっぱりと言い切る龍征に、それまでのひと月半に溜め込んだもやもやが全て吹っ飛んでいくような気がした。
「……そんなんで私が許すと思うか?」
私は笑いながら、今日の昼食である卵パンを半分に割き、片方を龍征に差し出して言った。
「ご飯まだだよな?」
そして顎で木陰の空いてるスペースを指し、座るように促す。
「今日さ、アラームかけ忘れて寝坊したから弁当作れなかったんだよね。半分で悪いけど……」
「一緒に食べようよ」
「……! ああ!」
__校舎裏、グラウンドの喧騒から離れた静かな場所に、久しく聞くことのなかった、二人一緒の笑い声が響いた。
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Ann/夜桜(よう)(プロフ) - はっ!!自己チューじゃない、事故チューだ( ˙-˙ ) (2016年11月5日 18時) (レス) id: 671e54cd06 (このIDを非表示/違反報告)
Ann/夜桜(よう)(プロフ) - 志吾さん» こちらこそ一帯誰がシリーズに携わらせていただいてありがとう〜!!しーちゃんの話もキュン死しながら見たよ!!夢主ちゃんのファーストキスは自己チューが1番ありえそう・・・ (2016年11月5日 18時) (レス) id: 671e54cd06 (このIDを非表示/違反報告)
志吾(プロフ) - 皆さんここまでありがとうございました! (2016年11月5日 18時) (レス) id: 6b4dfac9da (このIDを非表示/違反報告)
志吾(プロフ) - よーちゃんとってもかわいい話をありがとう!夢主ちゃん、わりと真面目にファーストキスは誰になるんだろうかと考えている((これからもよろしくね!! (2016年11月5日 18時) (レス) id: 6b4dfac9da (このIDを非表示/違反報告)
志吾(プロフ) - 八紡陽人さん、とっても素敵なお話ありがとうございます!私もあの二人との絡みを書きたくなってきました……!ありがとうございます!これからも一帯誰がシリーズを好きでいてくれると嬉しいです! (2016年9月27日 15時) (レス) id: 6b4dfac9da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一帯誰がシリーズの読者様 x他7人 | 作者ホームページ:http
作成日時:2015年9月10日 21時