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昔の事はそうめんと一緒に水に流そう 4 ページ27

「Aー、ハンドソープどこだ?」

 洗面所から龍征の呼ぶ声が聞こえた。そういえば新しいのを買ってからまだ詰め替えてないから、洗って乾かしっぱなしだったな。
 虎雪を少し待たせて洗面所へ。

「ごめんごめん。まだ出してなかった」
「や、別にいいけどよ」


 龍征に謝りながらふと洗面台を見ると、たくさんの砂が付いていた。海行ったからなーと、何気なく水を出して砂を落とした。
 そして、水を出したまま私が後ろの棚から新品のハンドソープを出していた時。


 悲劇は起こった。

「何だこれ?」

 どれのことだ、と思って振り返った。そこで私が見たのは、


「あっ……!」

 龍征があのブレスレットの紐の端を持ち上げたせいでガラスと貝殻が紐から抜け、からんからんと音を立てて洗面台に落ちた。そして、出しっぱなしだった水に流されて排水口へ呑み込まれてしまった。

 三人で作った“思い出”が。

「……っ、………………」
「あ、えーと、ご……」

 めん、は言わせなかった。

「龍征ッ!」
「てっ!!?」

 気づくと、手に持っていた詰め替え用のハンドソープを龍征に投げていた。驚く龍征に二の句を継がせず、かなり大きな声で龍征を怒鳴り付けた。

「バカッ!バカバカバカ!!最低!!龍征のバカぁっ!!!」

 そして、龍征から革紐を奪い取った。
 手に取ったそれは、どうしようもない現実を頭に刻んだ。頭の中はゴチャゴチャで、自分がどんな感情なのかもよく分からなかった。ぼんやりとあったのは、龍征がひどいことをした、という認識と、ブレスレットがもう戻らないという事実だけ。
 私はブレスレットだったものを握りしめ、龍征を睨み付けて、低くて平坦な声で言った。


「最ッ低」


 なぜだかポロポロと涙が溢れてきた。私は床に座り込んで、静かに泣いた。
 正直言うと、何であの時あんなに怒ったりあんなに泣いたりしたのかよく分からない。だって、最初にブレスレットを無くしたときは『仕方ないよ、諦めよう』で終わったのに。何であの時だけ泣き虫になったんだ?
 大声を聞いて駆けつけた虎雪がさすってくれた背中が細かく震えていて、『ああ、私泣いてんだ』ってやっと気付いた。

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Ann/夜桜(よう)(プロフ) - はっ!!自己チューじゃない、事故チューだ( ˙-˙ ) (2016年11月5日 18時) (レス) id: 671e54cd06 (このIDを非表示/違反報告)
Ann/夜桜(よう)(プロフ) - 志吾さん» こちらこそ一帯誰がシリーズに携わらせていただいてありがとう〜!!しーちゃんの話もキュン死しながら見たよ!!夢主ちゃんのファーストキスは自己チューが1番ありえそう・・・ (2016年11月5日 18時) (レス) id: 671e54cd06 (このIDを非表示/違反報告)
志吾(プロフ) - 皆さんここまでありがとうございました! (2016年11月5日 18時) (レス) id: 6b4dfac9da (このIDを非表示/違反報告)
志吾(プロフ) - よーちゃんとってもかわいい話をありがとう!夢主ちゃん、わりと真面目にファーストキスは誰になるんだろうかと考えている((これからもよろしくね!! (2016年11月5日 18時) (レス) id: 6b4dfac9da (このIDを非表示/違反報告)
志吾(プロフ) - 八紡陽人さん、とっても素敵なお話ありがとうございます!私もあの二人との絡みを書きたくなってきました……!ありがとうございます!これからも一帯誰がシリーズを好きでいてくれると嬉しいです! (2016年9月27日 15時) (レス) id: 6b4dfac9da (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一帯誰がシリーズの読者様 x他7人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2015年9月10日 21時

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