ハンサムガール！

◇ 初舞台、おめでとう ページ29

-




時刻は夜の20時過ぎ。

最近めっきりこの時間帯の冷え込みが強くなってきた。もう12月はすぐそこだということを思い知らされる。


ぐるぐる無造作に巻かれたマフラーに鼻までもぞもぞと埋め、ポケットに手を突っ込む。すぐ後ろの窓からはどんちゃか騒ぐ大勢の人達の声。




まだかなー、と足先を上下させてみたり、はぁ、と息を吐いてみたり。





「……お、来た来た」




走るような足音が聞こえてきて其方を見ると、待ち合わせしていた人物の姿。





「悪ぃ、遅れた」




今日は健こと健太郎とご飯の会なのだ。





「待った？」


「10分くらい待ったかな」


「そういうとこ可愛くねえなー」


「事実でーす。早く入ろ、寒い寒い」


「ん。待たせて悪かったな」


「いーえ」




健とは事務所が一緒なのと入ったのも同期の同い年で、まあ仲良くさせてもらっている。

モデルから役者、っていう流れも一緒だし、初主演映画で共演してまた仲もグッと縮まった。


それからはなにかとこうやってご飯の会として頻繁に会ったり、喋ったり、近況報告したり。多いときは週一、とか。





「じゃあまあ今回は、健の『初舞台』を祝して」


「どーも。かんぱーい」


「かんぱーい」




今日は昨日発表された健の初舞台出演のお祝いも兼ねたものだ。


もちろんソフトドリンクだけど。





「マネさんから先に聞いてたけど良かったねほんと」



お、厚焼き玉子定食きた〜美味しそう。



「まあ、まだ稽古は先だけどな」


「ずっと出たいって言ってたもんね。健はほんとスキルアップが早いわ」


「いやAに言われたくねえんだけど。今度ドラマやるんだろ？」


「ああ、まあね」


「まあねってお前……ほんと欲ないよな。もっとこう、嬉しい！とかない？」


「えー感情表現が下手なんですよ。これ先食べていい？」


「それ役者がいう言葉じゃないわ(笑) いいよ、って俺のも来た〜」




あ、健のたまご野菜炒め定食も美味しそう……今度それ食べよ。




「私も舞台出たいなー。ロズギル、ほんとにすごい良くてさ」


「ああ、菅田さんと生田さんのやつ？」


「うん。会場すんごい満杯だった」


「そりゃそうだろ(笑)」






まあ、そうか。







「いつか会場満っ杯にできるくらいになりたいよね」


「……そうだな」








がんばれよ、健太郎。







(ちょっとそれちょうだい)
(あ、じゃあ俺も玉子焼きもらお)



-

◇ 太鳳ちゃんと間宮さん→←◇ 高、低、高

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す