092 ページ42
.
「見るなっつったのに」
言葉を失ったあたしの頭を
優太がぽんぽん、と優しく叩く。
二人は車に乗り込んだ。
見たくないのに目をそらすことができない。
事情があるはず。
紫耀はもう叶わないからと言っていたし、
美咲さんだって旦那がいる身でそんな軽率な事するはずない。
きっと、何か…………
「はいおしまーーい」
優太の両手があたしの目をふさいだ。
それは、
車の中で二人がキスをしたから。
手で塞がれた暗闇の中で、どうかこの光景が夢であって欲しいと
好きな人の幸せを願うことができないあたしは最低なのかもしれない。
優太がゆっくりと手を離してあたしの目には再び光が見えた。
さすがにもう二人の姿を見たくないあたしは地面に視線を落とした。
「紫耀の車がオープンカーじゃなかったら良かったのに」
「………お前泣かないんだな」
「いい子だからね」
「よしよし」
優太の手はあたしの頭を優しく撫でて、
そのまま右手と左手が繋がれた。
「帰るぞ」
ああ、まただ。
また優太のこの手はあたしを救い出してくれる。
ただそこに、紫耀といる時のような高揚感がないんだ。
つい数分前に通った道なのにまるで違う道を歩いている気分だ。
来たときは断ったのに手を繋いでいて
来たときは早歩きだったのに今はかなり遅いペースで
バカを言い合っていたのに二人とも無言で
「……………A、俺の事好きになってよ」
歩きながら優太は小さな声で言った。
独り言のように言うから、あたしは聞こえないふりをした。
この状況でそんな事を言うのはずるい。
ずるいよ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2597人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
shi_chikin6(プロフ) - この作品ほんと大好きです！ハラハラドキドキ！更新楽しみに待ってまーす♪ (2016年10月2日 0時) (
レス) id: ea69c224ce (このIDを非表示/違反報告)
ANN - 忙しいかもしれませんが、更新頑張ってください！！大好きです(笑) (2016年9月27日 16時) (レス) id: e7aa92ac41 (このIDを非表示/違反報告)
だぁりか(プロフ) - いつもこの作品楽しみにして見てます！岸くん優しすぎてもうやばいです(*_*)次の更新楽しみにしてます(*^_^*) (2016年9月25日 22時) (レス) id: 1c45e95ee3 (このIDを非表示/違反報告)
花 - 面白すぎておもわずコメントしてしまいました、平野担です！でもまさか、岸くんの「好きだよ、ここから連れ出したいくらい」(間違えてたらごめんね)にやられました。続き楽しみにしてます！頑張ってください！ (2016年9月25日 19時) (レス) id: 63b2e22316 (このIDを非表示/違反報告)
ANN - 岸くんみたいな人がいたら…(泣)他作品も切なくてminiさんの作品大好きです。更新できる限りでいいので。応援してます！ (2016年9月24日 12時) (レス) id: e7aa92ac41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mini
| 作成日時：2016年8月11日 0時
