夏の夜は君と 2

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「って俺の話はどうでもええか！ごめんな勝手に話して」

「あ、いや、聞けて良かった」

「ちゃんと水族館の穴埋めはする！あとでみんなに謝りにいかんとな……申し訳ない…」



そう言ってまた顔を膝に埋める。

紫耀は普通にしているけれど、
本当はしんどいんじゃないかと思った。


あたしも、紫耀も、失恋したんだ。



涙が出なかったのはきっと、隣に優太がいてくれたから。

だったら次はあたしが紫耀の隣にいてあげればいい。




紫耀に近付いて、頭を優しく撫でた。




「紫耀、髪傷んでるよ」

「うん」

「杏仁豆腐食べたい」

「うん」



ゆっくり顔を上げた紫耀は、あたしと目が合うとにこりと微笑んで立ち上がり、冷蔵庫から杏仁豆腐とスプーンを取り出した。




「はい」

「ありがとうございます」

「ふっ、なんで敬語なん」

「紫耀は食べないの？」



蓋を開けながらそう聞くと紫耀は口を開けた。


ここであーんしてあげられたら可愛いのに、
あたしは恥ずかしくなってスプーンですくって自分で食べた。



「………くれないん？」

「……自分で食べて」

「一個しかない」



そんな子犬みたいな目で見つめないでよ…

あたしの周りの男は犬だらけかよ…


優太は大型犬で、紫耀は小型犬。



「なーーに黙って見惚れてん！見物料取るで？」

「きゃっ、」



「あ、ごめ………ん」




いきなり紫耀が近付いてきたから
あたしは杏仁豆腐を何故か手から離してしまった。



もちろん中身は空っぽで、
あたしのTシャツに綺麗に溢れた。



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