ヒーローは、アナタ。【K.Y】 (ページ25)

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映画館は電車とは反対でそこそこ混んでいた。

「ポップコーンとか飲み物とか買う？」

「買います！」

「だよね～買うよね～」

「でも喉に詰まったりトイレに行きたくなったりするのは嫌です…」

「わかる！めっちゃわかる！俺、始まる前に調子乗って飲みすぎて結構冒頭でトイレに行きたくなったことあってすっげえブルーになった」

「映画に集中できないですね」

「そうなの！しかも気を紛らわそうとポップコーン食べたら喉に詰まって死ぬほど咳き込んだ」

「不幸の連発じゃないですか…」

優太くんがトイレに行きたくてもじもじしているところも
死ぬほど咳き込んでるところも想像できる。

…その映画は誰といったんだろう。
彼女さんとか？
友達？でいて欲しい。

「Aちゃん？」

「…はい？」

「呼ばれてるよ、行こ？」

顔を上げるとスタッフさんが手を挙げて私たちのことを呼んでる。

優太くんは私の手首を掴んでその受付まで行った。

受付に付くとすぐに私の手首は離された。

私たちは周りから見るとなんて思われてるんだろう。
兄妹？いとこ？
…恋人同士だなんて絶対思われてない。

優太くんは映画代まで払おうとしてくれたけど
流石にそれは恐縮するから丁重に断った。
そしたら「ポップコーンと飲み物は俺が買う！」
って言ってくれた。

この人柄に惚れる人、大学に山ほどいるんだろうな。