paradigm

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お互いの家の玄関から別れの挨拶をして、2人でせーので家に入った。

今まではこんな些細な遊びも楽しかったけど、今日は作り笑顔を保つので精一杯だった。



家の中には誰もいないみたいで、しんと静まり返っている。


適当にリビングを見渡すと、お母さんが買ってきたであろうチョコレートが置いてあった。


たまには、甘いものもいいかな


包みを剥いて、口に入れた。


口の中に心地よい酸味と甘みが広がる。

どうやらイチゴ味のチョコレートのようだ。





数ヶ月前のバレンタインデーを思い出した。


佐久間は毎年手作りをくれて、『阿部ちゃんのは特別！』と型に流し固めたチョコレートにドライフルーツのイチゴを入れてくれたのがすごく嬉しくて、密かな楽しみだった。


でも、思い返せば今年は

『ごめん！ドライフルーツ切れちゃったから今年はなんも入ってない！』


と言っていた。

その時はなんとも思わなかったけど、今考えれば彼女さんのために“特別”なイチゴ入りチョコレートを作ったから、俺の分は無かったのか。



そっか

そんな前から、佐久間は



佐久間からの“特別”に勝手に舞い上がって、もしかしたら、なんて思ってた自分が途端に恥ずかしくなった。

惨めで不恰好で、最高にかっこ悪い。


親友の幸せも素直に祝えない俺には、こんなバッドエンドがお似合いかな




薄暗いリビングが霞んでいく。



しょっぱいチョコレートなんて、美味しくない。




end

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