第一章『美しすぎる策謀者』 ページ10
ーーー次の日。
私は硬いベッドの上で目を覚ました。
ゆっくりと起き上がると、そこは見慣れぬ薄汚れた部屋だった。しかも心なしか埃っぽい。
(…あぁ…。やっぱり夢じゃなかったんだ…)
一旦寝て起きたらやっぱり夢だった、なんでオチを想像していたが、現実はそんなに甘くないみたいだ。
私は昨日、確かに『ツイステッドワンダーランド』にやってきて、魔法で空飛ぶ帚に乗ったし、なんだか怪しい『ナイトレイブンカレッジ』という魔法士学校の生徒になったのだ。
隣のベッドでは、同じくこの世界に迷い込んでしまった人間の女の子、ユウがすやすやと寝息を立てて寝ている。
(…なんだか色々ありすぎて、あまり寝た気がしないな…。顔でも洗ってこようかな…)
確か洗面所は一階にあったはず…と思い、私は部屋から出た。ギシギシと軋む階段を一人で下っている途中、不意に後ろから声をかけられた。
「おい!お前誰だ?」
「はい?」
振り向くと、何やら青い猫のような生き物が二本足で立っている。
「あれ、猫だ…なんで二本足で立ってるの…?」
「オレ様は猫じゃない!」
「なっ…猫が喋った!!!」
「だから、猫じゃねーんだゾ!!」
そう言ってその生き物は不機嫌そうに足をバタバタさせた。どう見ても猫なのに、なぜ喋っているのだろうか…。私が寝ぼけているのか、それともこの世界では猫が喋るのは普通なのか…。
考えるだけ無駄な気がした。私は思考を放棄して猫に話しかけることにした。
「えっと…私はA。ユウと同じ監督生。よろしく…。」
「なにっ!?まさかお前も魔法が使えないニンゲンなのかっ!?」
「うん、そうだよ。あなたは?」
「オレ様は、いずれ大魔法士になるグリム様だ!魔法が使えないお前も特別にオレ様の子分にしてやるぞ!」
ふんっと自慢げに鼻を鳴らすグリムに私は「いやいいです」と断り、そのまま階段を降りた。
「ふな!?ちょ、ちょっと待つんだゾ!!」
グリムも慌てて私の後を追ってくる。なんか色々と文句を言っていたが、寝起きであまり頭が回らないため、面倒なので全部無視した。
グリムの話し声が大きかったからか、ユウが起きてきて二階から顔だけを覗かせている。まだユウも眠そうだ。
「おはよ〜…グリム、朝からなに騒いでるの。うるさい…。」
「ユウ!!!お前もなんとか言ってくれ!こいつオレ様のこと無視するんだゾ!」
「ユウ、この猫知り合い?」
「あー…そっか。昨日グリムは早く寝ちゃったもんね。」
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リオ - 更新頑張ってください! (2021年2月27日 14時) (レス) id: af465deb02 (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白いです!私はカリムとジャミルが大好きです!更新頑張って下さい! (2020年12月12日 16時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らの | 作成日時:2020年11月8日 19時