Prologue.7 ページ7
身体がぴったりと密着する形になっていたが、そんなことを気にする余裕などなかった。
「…なっ…おいっ!くっ付きすぎだ!苦しっ…」
「むりむりむり!!高いところ無理なんです!死ぬ!!助けてえええ!!」
「ちょっ…….あんまり暴れるな!」
ぐらぐらと帚が不安定に揺れるたび、抱きつく腕に力が入る。
それでもなんとか目的地に辿り着き、やっと地面に足がついたときには、もう手足がガクガク震えていて身体中冷や汗をかいていた。
「…はぁ、はぁ、はぁ……。こ、怖かった…。」
「それはこっちのセリフだ!俺を絞め殺す気か!?」
「いやいや、そっちこそ突然帚で飛ぶとかなんなんですか!私ついさっき異世界から来たんですよ!?魔法とか知らないんですよ!?そんな人間に対していきなりこんなのハードル高すぎでしょ!?」
「仕方ないだろう。これがこの学園の『普通』なんだ。」
はぁ、とため息をつきながらも、ジャミルさんは地面に座り込んだ私に手を差し出してくれた。私はその手を取ってしぶしぶ立ち上がる。
「ここがオンボロ寮だ。」
「……うわぁ」
案内された建物は、見るからに古くてボロボロで、まるで廃墟のようだった。先ほど見たスカラビアの建物とは比べ物にならないほど質素な造りだ。
「こんなところに人が住んでるんですか?」
「あぁ、住んでる。そしてこれから君も住む。」
「嘘でしょ…信じられない…」
「まぁ意外と中は綺麗にされてるから大丈夫だろう。」
ジャミルさんが扉をノックすると、しばらくして扉が開いた。中から顔を出したのは、ショートカットの中性的な顔立ちの女の子だった。
「あれ?ジャミル先輩、こんな夜中にどうしたんですか?」
「突然悪いな。彼女、君と同じ世界から来たらしい。今日から監督生としてここに住むことになった。」
「えっ!??」
その女の子は驚いた顔で私のことを見つめる。黙っているのも悪いと思い、わたしは自己紹介した。
「…Aです。さっきここにきて、よく分からない流れで監督生になりました…。よろしくお願いします。」
私が頭を下げるなり、その女の子は私に飛びついてきた。急に抱きしめられて驚きながらも、倒れそうになるのを必死で耐える。
「うう…なんて言ったらいいのかわからないけど…会えて嬉しい…嬉しいよおお!」
よくわからないが、とても喜んでもらえているみたいだ。
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リオ - 更新頑張ってください! (2021年2月27日 14時) (レス) id: af465deb02 (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白いです!私はカリムとジャミルが大好きです!更新頑張って下さい! (2020年12月12日 16時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らの | 作成日時:2020年11月8日 19時