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「A!だまひゃれひゃらめひゃよ!」
ユウが口いっぱいに食事を頬張り、もぐもぐしながら私に向かって恐らく、騙されちゃダメだよ、と言っていたんだろうけど、そんな美味しそうに食べながら言われても説得力などなかった。
食事中、スカラビア寮生の人たちはみんな気さくに話しかけてくれて、見ず知らずの私を快く受け入れてくれた。本当に楽しくて、異世界に来たことなんて一瞬忘れかけていた。
そして長い食事が終わり、時刻は19時半になろうとしていた。
あれだけ沢山あった食事も全て無くなり、今となっては空になった皿がただ机に置いてあるだけだ。
「ふな〜〜〜おいしかったんだゾ〜」
「久々のスカラビアのご飯……最高です…」
ユウとグリムは幸せそうに、最後まで皿に残った食事を平らげている。
私も、料理が美味しすぎてつい限界に近いほど食べすぎてしまった。
「はは!喜んでもらえてよかった!」
「はい!楽しすぎて時間も忘れてました!もうすっかり夜ですね〜」
「ああ。お前ら、今日は泊まってけよ!客室なら空いてるぞ!」
またまたカリム先輩が太っ腹なことを言う。流石にこれだけ飲み食いしてさらに泊まらせていただくなんて、申し訳ない。
「いえ、いいですよ…そんな」
「でも…グリムも寝ちゃってるみたいだし」
そう言われてグリムを見ると、さっきまで起きてたのにもうよだれを垂らして眠っている。
「えええ!?ちょっとグリム!!」
「A、遠慮なんかしなくていいんだ。うちはよく客人が来るから慣れてるし、誰も迷惑なんて思わないぞ!泊まっていってくれた方がこっちも楽しいし」
そう言ってカリム先輩はニッコリと笑った。本当に純粋で本心からの笑顔なんだろう。人懐っこいその笑顔につい心が緩んでしまう。
「そこまで…おっしゃるなら…」
「ユウも久々に泊まってけよ!」
「本当にいいんですか?明日も普通に学校なのに…」
「ああ!もちろんだ!なぁジャミル?」
「…あぁそうだな。そっちの方がこっちとしても都合がいい。」
ジャミルさんはそう言って椅子から立ち上がり、何故か私の腕を掴んだ。
「………へ?」
「さぁまず最初の仕事だ。泊まりならまだたっぷり時間はあるからな」
「……え?あの…ちょっと?」
「悪いなユウ。しばらくこいつを借りるから、カリムの相手でもしていてくれ。」
そう言ってジャミルさんは有無を言わせず私をずるずると引きずって歩き始めた。
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リオ - 更新頑張ってください! (2021年2月27日 14時) (レス) id: af465deb02 (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白いです!私はカリムとジャミルが大好きです!更新頑張って下さい! (2020年12月12日 16時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らの | 作成日時:2020年11月8日 19時