月曜日21時のヒロインⅡ【R.S】 (ページ4)

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ryuto

あのあと、撮影が再開して。

「"光っ…！！！”」

俺が台詞を言うと、
綾瀬さんは目が変わった。

殺気立ったような、
役が憑依したような。

纏う雰囲気も一気に変わって。
綾瀬さんの格を見せつけられて、
俺は、鳥肌がぶわっと立った。

周りの息を呑む音さえ聞こえそうな気がした。

着いていくのが精一杯で、
置いていかれないように、
必死に、必死に、演じた。

初めての恋愛ドラマ。

綾瀬さんを抱きしめたときに感じた、
ふわっと香る髪の匂いを
俺はきっと忘れないだろう。

「"駿っ…聞きたくない…っ”」

「"無理。もう、幼馴染のままじゃいられないから。”

"ねぇ、光、聞いて…？”」

「"駿っ……。”」

「"…俺、ずっと、光のことが好きだった。
今も、これからも、ずっと…好き。
アイツに渡すのは嫌だっ…。”」

「"ご…ごめんなさい…っ。”」

「"何でだよ…っ！アイツのどこが
いいんだよっ…！！！”

"この間だって…泣いてたのに…。”」

「"それでもっ！！！
それでも好きなの……。”」

綾瀬さんが、光が、
俺の体を突き放し走っていってしまう。

「カーット！！！！最高！！
いいね～！2人とも！！」

「作ちゃん、いいよ～。
アドリブで涙流しちゃうなんて、
めちゃくちゃいいよ～！！！」

え…？涙…？

急いで頬を拭うとそこには涙の跡。
役に入り込んだあまりに、
駿の気持ちになりすぎて流れてしまったらしい。

意外と…入り込むタイプなのかな…。

綾瀬さんは走っていった先で
メイクを直してもらっていた。
そこには、もう、光はいなかった。

"アイツのどこがいいんだよ”

自分が発したこの台詞が何故か
俺の頭をグルグルと、回っていた。