《１５１》 ページ6
「あ、おにーちゃんっ！」
「Aおま…ッ！どこ行ってやがった！！」
私の姿を見つけるなり人混みを掻き分け勢いよく走ってくる兄は、顔を青ざめさせていた。
次いで私の元に来れば両方を力強く掴み、怪我の有無を素早く確認する。
「おにーちゃん、わたし、だいじょうぶだよ？」
何かあったわけでも無い為怪我一つないことを伝えた所でそう簡単に兄が納得するとは思っていない。
それ故に一通りと言わず気が済むまで確認してもらおうと、その場でくるくると回って見せる。
繰り返し確認してようやく気が済んだのか、ふと顔を見れば少し前まで真っ青だった顔もようやく健康的な色味を取り戻していた。
その姿に私がふにゃりと笑みを見せれば、兄は優しく私の体を抱きしめる。
「…っとに、どこ行ってやがったんだぁ！どこ探してもいねぇから生きた心地しねぇだろうが…」
段々と腕に力が込められているのか、抱かれる体にかかる圧が少しずつ強まるのを感じる。
心配したと、弱々しく兄の口から紡がれた時には、私は目に涙を溜めながらも溢れさせまいとして唇を噛み締めた。
そんな私の姿を見ると、兄も吊り上げていた眉をハの字に変えて、緩く口元に弧を描く。
「ンなことで泣いてちゃ、兄ちゃんみてえに強くなれねぇぞぉ？いいのかぁ？」
「や、っけど…！でもっ…おにーちゃ、おこってるからぁー…」
嗚咽を交えながらも必死に紡いだ言葉に兄の顔はたちまち笑みが咲く。
気付けば私の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだというのに、その顔を躊躇いもなく自身の袖で拭いてくれる兄は、目線を合わせるように屈んでいた体を起こし私の手を取った。
「兄ちゃんはAさえ無事でいてくれりゃそれでいいんだぁ。だから怒っちゃいねぇよ」
帰ろうかと、私の手を引く兄に向けて大きく頷く。気付けば涙は止まっていて、私は兄の手をきつく握りしめ人混みの中を歩く。
途中思い出すのは先ほど出会った男の子。お菓子をもらったお礼に、今度は私が持って行こうと考えれば、私は帰路にあるお店にいくつか立ち寄り兄に強請っていた。
「おにーちゃん、A、じぇらーとたべたい」
「ゔおぉい…散々菓子買っただろうがぁ…」
「それはダメなの！Aはじぇらーとがいいのっ！」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年9月21日 21時
