《１７７》 ページ32
【XANXUS side】
あれからくだらない教養を受け続け、俺は太々しくも巨大マフィアのボス候補としては申分無いほどに成長した。
俺を見ただけで腰を抜かすカス共も、いずれ俺が手に入れる権力と富を求め近寄るクソみたいな女共も、全てが煩わしいものだった。
しかしそれと同時にこの下民共を見る度に思い出すことは、たった1人の幼い女の姿。
あいつに会いに行く時間はもう充分すぎる程あるし、守ることだって今更の俺には簡単に出来るというのに、会えない日々を嫌というほど重ねていく。
それ程に、俺の知るあの女の情報が少なすぎた。
—————傲慢兄妹。
記憶に残るたった一つの手掛かりも、あの当時であれば簡単に探し出せたであろうものの、今となっては何の手掛かりにもなりやしない。
傲慢兄妹の兄の方だけでも追えないかと手を尽くしたこともあったが、腕の立つ情報屋ですら伝説として語り継がれていると言っていた。
会えない日々が続けばこのくだらない日常にも嫌気がさしてくるのは当然で、
そんな中不意に知ることになった真実に、俺は絶望と同時に俺とあの女を引き裂いた老いぼれに憎悪と怒りを覚えることとなる。
「……俺は、実の息子じゃ、ねえっ、ていうのか…？」
俺と老いぼれには血の繋がりが無く、掟により後継者にもなれない。
日記に記された衝撃の事実に、俺は一瞬の思考が停止するのを感じた。
俺が手に入れるはずだったボンゴレの10代目という地位も、この掟がある限りは叶うことはないのだろう。
そうするとボスになるからと費やしたクソみたいな時間は全て無駄だったというのだ。
引き取られなければ今も続いていたかもしれないあの女との束の間の時間も、関係性だって、あの女との出来事を壊したあの老いぼれに、憎しみを抱くなと言われる方が難しいだろう。
「っ…は、は…おれが、この…俺が…ッ」
その辺のカス共より劣る人間だった。
散々平伏せてきた愚民共に、本来は俺が平伏さねばならぬ存在だった。
クソみたいな事実に俺の怒りは募るけれど、何よりも許せなかったのは、
地位も名誉も手に入れて、あの女にまた会いに行くという、幼い頃の俺の夢が砕かれたこと。
どんなに足掻こうと、俺はその夢を叶えることが出来ねえんだ。
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年9月21日 21時
