《１７６》 ページ31
【XANXUS side】
「………おい、何してやがる」
「それは私のセリフだよ。XANXUS…これはどういうことだい？」
視界を覆う眩い光と、立ち込める煙。
不意の爆発にも似たような状況が生み出されれば、俺は煙の先に見えるシルエットに思わず眉間を寄せる。
ゆっくりと煙が晴れる隙間から覗かせた髭面の親父は俺の圧に怯む事なく見据えれば、静かな空間に一つの舌打ちが響いた。
「XANXUS。この状況がどういう事か説明してくれないか？」
「あ？見りゃわかるだろ。そこのカスを消してやろうと思っただけだ」
フン、と鼻を鳴らしながら怯えた表情で床にへたばる使用人を見下ろせば、親父は呆れた溜息を漏らす。
何を言っているのか理解ができないと、そんな顔をする親父に苛立ちは募り、再び手に炎を宿すと親父も間髪入れずに自身の武器に炎を宿す。
しかし相手は一家の大黒柱。例え俺がここ最近戦闘訓練を受けていようと簡単に敵う相手な訳はなく、いとも簡単に捩じ伏せられれば俺は悔しさに顔を歪める。
「ッ、なせ！離しやがれ！！」
「落ち着きなさいXANXUS。…一体、何があったんだい？話してごらん」
引き取られてから今まで、文句は言いながらも反抗する姿勢を見せなかったからなのか、親父は暴れる俺の姿に呆れというよりも、何処か困惑を浮かべているようにも見えた。
その姿に微かな罪悪感を感じながらも、俺の中を埋め尽くすのはあの女の笑顔だけだった。
会いたい、
一日中そばにいたいなんて我儘は言わねえ。ただもう一度会って、強くなって会いに来るからと伝えたかった。
しばらく会えなくなる前に、俺の知った沢山の美味いもんをあいつにくれてやって、笑うその眩しい表情を目に焼き付けたかった。
何よりも、あの女と離れてしまっても、またいつか必ず会いに行けるように、
俺の名を伝えたかった。あいつの名を知りたかった。
声を大にして叫んでも叶わぬその夢に、
俺はこの日からはただ、ロボットのように過ごす時間を重ねていった。
ただの一度もあの約束の場所に行くことは叶わず。
会いたい。その感情を日々押し殺しながら。
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年9月21日 21時
