《１４９》 ページ4
「なぁ、何であかとくろのおにいちゃんなんだ？」
「え？だってあかいめしてて、くろいかみなんだもん！」
これとこれ、と私は隣を歩く男の子の目と髪を指さして笑う。
何だそれと言って呆れたように溜息をつかれれば、私の笑みはたちまち崩れ代わりに膨れる頬。
ぷくっと餅のように膨れた頬にははち切れんばかりに込めた空気を男の子が指で突いて割れば、軽く抜けた音が耳に届く。
「ぶはっ！おもしれぇ」
「ひゃひひゅるにょぉ…」
揶揄うように萎んだ頬を男の子は伸ばしたりするもんだから、なかなかうまく言葉が出てこない。
やめろとその手を軽く叩いても止める気配は一つとなく、男の子はしばらく私の頬を堪能するも、不意に手を止め解放される頬。
微かなひりつきを感じわざとらしくそれをさすっていれば、男の子は今浮かんだであろう疑問を私に投げかける。
「なぁ、あかとくろはわかったが…おにいちゃんは何でだ？」
「んー、それはね、わたしのおにーちゃんに似てるから！すっごくかっこいいんだよ！」
そう告げれば男の子は目を丸くし二度三度瞬きをした後に、少し照れ臭そうに頬を掻いていた。
微かな赤みを帯びた頬が”おにーちゃん”と呼ばれたことに対してなのか、はたまた”かっこいい”と言ったことに対してなのかはわからないけれど、不快でなかったことだけはその反応から見て取れる。
ぎこちなく笑う男の子を見ると何故か私も照れ臭い。
「おにいちゃんってことは、おまえは俺の妹でもあるんだな」
「……そうなるのかなぁ？」
男の子呟きがイマイチ理解できず、曖昧な返事をしながらも妹という言葉に嫌悪は感じない。
どちらかといえば私の反応に嬉しさを露わにする男の子が私も嬉しくて、よし！と握り拳を作る腕にたまらずしがみつく。
「…どうした？」
「もうひとりおにーちゃんできてうれしいの！」
そう告げるとまた照れ臭そうに笑う男の子は、私の頭を慣れない手つきで乱雑に撫でる。
それがどうにも慣れず、少しくすぐったかった。
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年9月21日 21時
