《１６７》 ページ22
ついて来いと手を差し出され、握り返せば男の子は私を引いて歩き出す。
どこに行くのかは告げられていないけれど、恐らく男の子のスペースに連れて行ってくれるのだろうと、その足取りの軽さから察している自分がいた。
人が行き交うメイン通りとは裏腹の寂れた道には相変わらず周りの目など視界に入っていないと思われる人達がポツポツと見受けられる。
しかし以前訪れた時とは違った雰囲気と、時折感じる好奇の目に私が不安を露わにすれば、男の子は私を隠すように抱き寄せてくれた。
「もう少しだけ我慢しろ、ここを曲がれば…」
曲がり角に差し掛かった時、不意に止められた歩みに私も思わず立ち止まると、同時に男の子から感じる肌を痺れさせる空気に私は思わず息を飲む。
目の前には数人の大人が待ってましたと言わんばかりに立ちはだかり、男の子の顔を見るなり下品に顔を緩めていた。
「チッ…こっちだ」
「あ、ちょ…おにーちゃっ…」
振り返ると掴んでいた手は勢いよく引かれ、私は若干の体勢を崩しながらも必死についていく。
後ろからは大人達が大声を上げ追ってくるけれど、男の子が子供の体型を活かして逃げ回る故に中々追い付かれることはない。
一つの路地裏に辿り着いたとき、追っ手から逃れられた事に安堵しその場に座り込む男の子は、抱えていたお菓子の幾つかが手元にない事に気づくと眉をあからさまに垂らしていた。
「……折角持ってきたもんだったよな…その、…悪、かった」
謝り慣れていないのがそのぎこちなさから嫌でも伝わってくると、私は思わず笑みを漏らす。
それを見た男の子の垂れていた眉は途端に眉間に皺を寄せれば、笑われたことが不服だったということがすぐにわかった。
「わらってごめんなさい、おにーちゃん、おもしろくって…」
「…お前が笑ってくれるんなら、構わねえよ」
それよりもと、追われることに巻き込んでしまったことに罪悪感を感じていたという男の子は私の乱れた髪を優しく指で梳く。
指から零れ落ちる私の銀を見据える紅があまりにも綺麗で、私は迫る影に気づかず警戒を緩めてしまっていた。
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年9月21日 21時
