《１６１》 ページ16
【スクアーロside】
「おにいちゃん……Aおもらししちゃったの…」
ようやく落ち着いたのか、目元には引っ込んだ涙の跡が白く浮いている。
抱きついていた体をゆっくり離せば、Aは少し躊躇いながらそう呟いた。
部屋に入った時こそは泣きじゃくるAを見て何事かと思ったが、すぐに察しがついていた。
最初から咎める気など一切無かったが、きっと怒られると思ったのだろう。
しかし自分からきちんとこの出来事と向き合おうとする姿に、俺は頬を緩めながらAの頭を優しく撫でていた。
「ちゃんと言えてAは偉いなぁ」
少し乱雑に撫でてやる頭に、曇っていたAの表情も少しずつ綻ぶ。
いい加減濡れた服のままじゃ気持ち悪いだろうと着替えを進めてやれば、Aは早々に服を選び、俺の手を引いた。
「おにいちゃんもいっしょにあわあわってしよ？」
有無を言わさぬその顔。
可愛い妹からのお願いなら拒否する筈もなく、小さなその体を抱いてイエスを示せば、Aは無邪気に笑う。
「んじゃ今日は兄ちゃんがAの髪でも洗ってやるかぁ！」
「やったー！じゃあAはおにいちゃんあらうー！」
「お、Aのシャンプーは世界一だから嬉しいぜぇ！」
俺の言葉にAの顔が更に明るくなれば、早速と言わんばかりに抱きかかえたまま歩き出す。
Aはおろせと腕の中で暴れていたが、俺はそれを無視して歩みを進める。
途中お袋とすれ違った時には漏らした事を知られたくないのか、大人しくなるAを見てお袋は察したように俺を見ていた。
気を遣ってか、察した事を悟られぬよう仲がいいなんて当然のことを言いながら笑みを溢して立ち去るお袋の姿が見えなくなれば、また俺の腕で暴れ始めるA。
浴室へ着くなり抱きかかえていた体を静かに下ろすと、不貞腐れた顔をしながらもおぼつかない足取りで服を脱ぐ姿が視界に入った。
「服も自分で脱げるようになって、Aはもう姉ちゃんだなあ」
「…むぅ……いっぱいれんしゅうしたんだもん…」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年9月21日 21時
