《１５９》 ページ14
【スクアーロside】
「Aね…あのね、行っちゃったのー…」
俺の顔色を不安げに伺いながら紡がれる言葉は、正直何のことかさっぱりわからなかった。
何のことかと聞き返しても�犢圓辰舛磴辰伸瓩靴�言わないからてっきりまた誤魔化そうとしているのかと思ったが、純粋になんて言えば良いのかわからなかったようだと気付いたのは、Aの必死な顔のおかげ。
「あのね、おっきいやつのとこね、いくのっ」
「お、おう…それでどうすんだぁ？」
幼いながらにも知ってる言語で、身振り手振りで伝えようとするその様は本当に愛らしい。
最初こそ何が言いたいのかわからず苦笑いだった俺も、気づけばその姿に段々と頬を緩めていた。
自分は必死に伝えようとしているのに、その隣で笑われていたんじゃ少しむくれたくなるのもわかる。
何を笑っているのかと問いかけながら頬をぷっくり膨らますその様に盛大な笑いが漏れた。
「ぶはっ！まるで餅みてえだなぁ！」
「もち…？」
突然笑い出す俺の姿に驚くや否や、今度は何だそれはと言いたげな顔で首を傾げるA。
ころころと変わる表情はまるで百面相。
正直Aの話そうとしていたことなどそっちのけで、俺は揶揄うようにAの変わる表情を楽しんでいた。
「もー！おにーちゃんってば！」
「ゔおっ！わかったわかった、すまねえなぁ」
その小さな手で握り拳を作り、俺の体に小刻みに振るうその姿ですらも俺の笑いを誘う。
しかしここでまた一笑いすればより一層可愛い妹のご機嫌が悪くなると思えば、俺はその手を拒むことなくされるがまま。
痛いなんてわざとらしくも見せてやれば、Aはその姿に満足したのか腰に手を当て得意げに笑って見せた。
「つぎいじわるしたら、もーっとやっちゃうんだからね！」
「Aは強いからなぁ…そりゃごめんだぜぇ」
わしゃわしゃと掻き乱すように頭を撫でてやだだからなのか、強いと言われた事に嬉しさを覚えたのか、Aは少し照れ臭そうにはにかんでいた。
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年9月21日 21時
