《１０４》 ページ8
何故こんな時にすらも私の胸は締め上げられるような高鳴りをするのか。
薄暗くてよく見えないはずなのに、私の視界にはハッキリと兄の顔が映し出される。
この薄暗さでも銀色の髪は煌びやかに輝いているせいなのだろう。
兄の顔の良さが際立出せ、私はたちまち熱が帯びるのを感じてしまえば顔を逸らす他なかった。
「ど、っ…どいてよ…！」
偶然なのか兄が狙ったものかはさておき、押し倒されてしまった体を起こそうにも両手は押さえつけられ、私の横たわる体の上には当然兄がいる。
そんな状況で動けるわけもなく私はただ言葉で促すことしかできない。
かと言って兄がその言葉に従う訳もなく、気づけば片手で私の手を押さえつけ、もう一方の手は私の顎へ回されていた。
掴まれる顎は強制的に兄と顔を向き合わされる。
嫌でも向き合わなければならない顔に再び羞恥が襲い、私は早くこの時間がすぎることを願い視線だけを彷徨わせていた。
「…A……」
今にも消えてしまいそうなほどにか細い声。
普段からは絶対に想像することもできないその声音に思わず兄の顔を見れば、寂しげな表情で私を見つめている兄と目が合う。
「何かあったんなら言ってくれねぇかぁ…俺は何故避けられてる？何かしちまったのか考えても、わからねぇんだ…」
「…お、に…ちゃん…」
悪いと言って、私の体にもたれ顔を埋める兄は今にも壊れてしまいそうなほどに弱々しい。
あのヴァリアーのNo.2が、作戦隊長をも務める男が、こんなにも弱々しい姿を見せるなんて誰が想像しただろうか。
気づけば解かれていた手は自然と兄の体に回っていた。
謝らなければならないのは私なのに、何故私が謝られているんだろう。
自分勝手な気持ちだけで動いた末路がこの兄の姿なら、私はなんて愚かな人間なのか。
無理をするなと言って兄は私の手を離そうとする兄を振り払い、私はきつく兄を抱きしめた。
ごめんの言葉は何度も部屋に響く。
「…俺が嫌いならそれでもいい。だが…、俺はAのことが大事なんだぁ。頼むから、俺の手で守らせてくれぇ…」
「……ばか兄貴。嫌いな訳ないじゃん。
こんなに……っ、情け無い自分、見せたく…なかったんだよ…」
伝えたい�犢イ��瓩慮斥佞魯哀辰醗�み込んで。
そうすればまた、兄と妹に戻れるから。
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年8月3日 14時
