《１３７》 ページ41
「…っざけんじゃないわよこのクソガキ！」
勢いよく振り上げられた女の手は迷うことなく私目掛けて振り下ろされ、直後に乾いたような破裂音にも似た音が大きく響き渡った。
その勢いに、正面を見据えていた私の顔は自然と横を向くと、周りの唖然とした空気が頬に突き刺さる。
じんじんと痺れるように広がる痛みに合わせて、微かな鉄の味。恐らく今の衝撃で口の中のどこかをうっかり切ってしまったんだろう。
しかし私はこの状況下に臆することなく、ただ黙って、きつく女を睨みつけた。
「な、っによその目は…！！」
ふざけんなと掴みかかられても私は動じる事なくそれを受け入れる。
正直こんな一般人の女の力などたかが知れているため、振り解こうとすればいくらでも出来る。
しかしいつ怒りに呑まれて理性を失い、一応無害の一般人を傷つけてしまうかもわからない状況下で手が空くのは不安がある故に、私はされるがままを選択した。
やり返してこない私を女がどう捉えたかはわからないけれど、煽って来ているところを見ればまた怖気付いているとでも思われているんだろう。
「…いいの？手、出して」
やれるものならと挑発されれば、私を抑える他の女達の力は強まった。
けれど女の力もたかが知れている。その腕を振り払い主犯の女へ歩みを進め、私はその首を掴んだ。
「ねぇ、XANXUS様やお兄ちゃん達を貶した事、撤回してよ。あの人達はアンタに貶されるほど価値の低い人じゃないんだから」
「…はぁ？だって御曹司でも跡継げないのは事実でしょ？中学生との後継者争いで負けた男だっ…」
「黙れよ。アンタに何がわかるのかって言ってんじゃん」
掴む手により一層の力は籠る。
怒りに身を任せているせいで、自然に強まる手は加減を知らない。
苦しげな顔をしている女を見て、周りは私の怒りの矛先が自分に向くのを恐れているのだろう。誰も手を出さず見ているだけだった。
「…ボスが…どれだけ真剣にボスの立場と向き合って来たか…っ！！
お兄ちゃんや、みんなが…その望みを叶えようとどれだけのもん賭けたと思ってんのよ…！！」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年8月3日 14時
