《１３５》 ページ39
部屋に足を踏み入れるなり集まる視線など目もくれず、手前にいた女の頬を勢いよく叩いた。
止めに入る声に主犯と思わしき声を見つければ、迷うことなく足を進めその胸ぐらを掴む。
「……にが……っのよ…」
「は、はぁ…？」
「アンタ達なんかに！何がわかんのよ！！！」
初めて出た、兄にも負けない怒声。女達はその声に一瞬肩を跳ね上げる。
自分自身でも驚くほどの声量に、それほど怒りを露わにしていることがわかる。
その声にようやく自分たちの会話が聴かれていたことに気づき、焦る者もいれば盗み聞きと言う行為に腹を立てる者もいた。
「盗み聞き…？アンタ達が周りを気にせずベラベラと話してるから聞こえてくるんでしょうが」
「だ、からって…！お声を掛けてくだされば…！」
この女の主人は私ではない。
最近こそはめっきり減ったものの、世話こそは多少してもらってはいたが、それは今の主人である兄かボスの命によるものだからこの女たちは従っていただけ。
自分の主人でないのをいいことに言いたい放題な女達は、もう私を目の前にしても口を閉ざすことなく誹謗を述べる。
「…こんな所、来るんじゃ無かったわ。ルックスは良くても、こんな小娘に女見せられてほいほいされた上に権力争いでは負けた集団だし…」
煽るような目つきでそう述べる女は私の震える体を見て鼻で笑った。
次いで紡がれる言葉は、私を久しぶりに暗殺者へと導く。
「……貴方のお兄様も、中学生に、ねぇ？」
再び大きな音を立てれば、私はその女を床に捩じ伏せていた。
周りにいた者は皆その姿に驚きと焦りで表情を入り混じらせてはいるが、理解が追いついていないのか、私の放つ殺気のせいなのか、止めに入る様子は見られない。
それを好都合と言うわけではないけれど、掴む手は怒りに身を任せているせいで自然と強くなる。
次第に苦しげな表情を見せる女を、今度は私が鼻で笑った。
「散々罵ったんだから、こうなる覚悟ぐらい出来てるでしょう？」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年8月3日 14時
