《１３３》 ページ37
「あと2週間かぁ…早く来ないかなー」
「まぁそう焦んなや、ゆっくりすりゃいいじゃねぇかぁ」
わしゃわしゃと、髪を乱すように私の頭を撫でる兄。
無事に診察も終わり、今度は屋敷へ帰る車内にて行き同様、なんてことない会話を繰り広げている。
結局兄の言う通り今日付けでの復帰は私の儚い夢として散ることになったものの、2週間後の検診にて異常無ければ復帰の許可を出すと医師は言っていた。
言霊だと言わんばかりの兄の正確さに、医師から話を聞いた時は思わず兄を睨んだ。
「…じゃあこの2週間で、みっちり鍛えてくれる？」
「ぶはっ！テメェの頭ン中はそればっかだなぁ」
「事務仕事は飽きたの！」
ずいっと身を乗り出し兄を覗き込む。
はいはいと軽く返事をされるもんだから、本当にわかってるのか少しの疑問が生じる。
それを問い掛ければ今度はうるさいと軽いデコピンが飛んできた。
「ちゃんと座らねぇなら何もしてやんねぇぞぉ」
「うー…それはズルいもん…」
わざとらしく額を摩り痛がりを見せても無反応。
その対応に頬を膨らませ、仕方なく座り直す私を見て兄はまた笑った。
そんな笑顔を不意で見せる兄は心底ずるい。思わず頬を赤らめたのはバレてないだろうか。
さりげなく髪を直すフリをして視界から兄をシャットダウンしたと言うのに、垂らした髪は兄の手でまた耳にかけられた。
「ちゃんと手入れしてんだなぁ」
「え、あ…、っうん…」
ねぇお兄ちゃん、どうしてそんな目で私を見るのよ。
そんな目で見られたら誰だって勘違いするでしょう？
触れられる髪ですらも熱を帯びているのではと不安になる程今の私の体は熱く、なんてことないように装っていても早る心臓はやはり止められなかった。
ただただ落ち着けと自分に言い聞かせ、何度か深呼吸を繰り返す。
繰り返していればようやく落ち着いてきたというの、なんなんだこのバカ兄貴め。
「気分悪ぃのかぁ？ほら、こっち来い」
少し寝ろと、不意打ちで抱き寄せられた体は兄の体に持たれ、再び鳴り響く心臓のせいで目を閉じていても、眠りにつくことなんて出来やしなかった。
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年8月3日 14時
