《１２８》 ページ32
揶揄われながらも部屋に着けば、私は早々にデスクと向き合いペンを取る。
ここ最近立て続けに任務が入っていたせいでやらなければならない書類は数多く、それを一枚一枚確認しながら処理をしていった。
そうしている間にも幹部は任務を終え新しい報告書やら調査資料やらを持ってくるもんだから、中々減らない書類の山に溜息が出た。
横には片手にグラスを持ちながらデスクに足を乗せて寛ぐボスの姿が見え、やる気の無さが窺える。
正直最終チェックはボスにしてもらいたいと言うのに、その多さから完全に面倒だと職務放棄をしてしまったもんだから、溜まりに溜まった書類がボスの周りには散らばっていた。
「ボス、そろそろお仕事しませんか？これもこれも、みんなボスのサインがなきゃ次に行けないんですよ…」
「あ？知るか。代わりにサインしとけ」
散らばった書類を一枚一枚拾いボスのデスクに置けば、その書類は私に突き返される。
ここ最近はずっとこんな調子で丸投げされてばかりなせいでもう驚きもしなかった。
どちらかと言うと呆れてしまい、溜息を漏らしながら突き返された書類を受け取れば、一通り目を通してボスの名でサインをしていく。
本当にこれで良いんだろうかと疑問はあったものの、ボスは昔からそんな感じだったと兄が言っていたから良いと思うしかない。
終わらせる範囲は決めていたものの、終えればまだまだ先の長い処理を見るなり時間を忘れて私は仕事に没頭する。
「おい、いつまでやってんだ」
声をかけられハッと我に返ったように顔を上げれば、ボスは険しい顔で私を見ていた。
外はもうだいぶ真っ暗だというのに気付かなかったのは、知らないうちに部屋の明かりを負担にならないようにとボスが少しずつ灯してくれていたからだろう。
時計を見ればすっかり深夜を回っていて、そろそろ任務に出かけた者も帰ってくる頃合いだ。
「ごめんなさいボス！もうお休みの時間ですよね…って、わわわっ…」
慌てて退散しようと立ち上がれば勢いの余りに書類が舞い、辺りに散らばるのを見て私は肩を落とす。
その光景に呆れたボスは溜息混じりに何をやってるんだと一言。
けれどそんなこと言いながらも、仕方なくでも拾うのを手伝ってくれるボスはやっぱり優しい。
「ほらよ」
「あ、ありがとうございます！ボス…！」
差し出された書類を受け取った時、何かを感じた。
覚えているような、覚えていないような、でも何処か懐かしいような昔の記憶。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まいたけ | 作成日時：2023年8月3日 14時
