《１２７》 ページ31
「…退いてもらえるかな、やる事あるからさ」
とある日、私は夕食を終え残りの雑務を片付けてしまおうとボスの部屋へ向かっている途中にひょんな事から足止めを食らっていた。
ここ最近は随分と大人しかったというのに、私が兄に以前抗議を申し立てたことが回り回って伝わったのだろうか。
遠回しに邪魔だと伝えても動く気のない目の前の人達は、本当に教育という教育を受けてきているのか疑わしくも感じる。
「お、お待ちください…！」
「触らないで」
埒があかないと、遠回りしてでも立ち去ろうとした私を制止する女は私の腕を掴み制止する。
本来なら仕える者が円滑に物事を進められるよう尽くす事が仕事の使用人が、何故こうも邪魔ばかりしてくるのだろう。
その煩わしさから思わず手を振り払い凄んでしまえば、女は途端に泣き出した。
…あぁもう、やる事が溜まっているというのに。今度跳ね馬に会ったら再教育を言い聞かせねば。
けれどその前にこの現場を何とかしなければ、また有る事無い事をレヴィに吹き込まれ仕事の効率が下がってしまう。
「…ごめんなさい。手、強く払いすぎちゃった…泣かせるつもりはなかったの」
引き連れていた他の使用人達が当人を慰めるように囲い、座り込む所に手を差し出せば、その当人の女は仕返しかと言わんばかりに私の手を振り払った。
その行為に何も思う事はないけれど、一つ溜息をつけば私は立ち上がりその女達を見下ろす。
何も言うことなどない。ただ黙って見据えれば、女達は顔を強張らせていた。
「血が出ているようだから医務室へ行ってね。それじゃ」
私の対応が冷静すぎるからこそ惨めなのか、震わせる体は私を睨んでいた。
それを横目に今度こそその場を立ち去り、私は少し遠くなったボスの部屋へと向かえば、丁度ボス自身も戻る所だったようで当たり前のように隣を歩く。
「…良いのか」
「え？何がですか？」
「またやられても知らねぇぞ」
不意似かけられた声にハテナを示せば、腰に回されたその手に抱き寄せられると、ボスに触れる体に私は次第に熱を帯び始めた。
何故言葉で言わずに行動で示すのか、口角を上げ悪戯に笑うボス。
「もうっ！言葉で言ってくださいよ！！」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年8月3日 14時
