《１２０》 ページ24
「ぼ、ボス…っこれはどういう状況で…！？」
「寝る。てめぇは黙ってここにいろ」
「そそそそんなの無理ですって…！し、心臓が…っ」
心臓が持ちません、ボス。
何の気なしに兄の話をしていて、ボスはそれをくだらないと言う顔をしながらも私の話をベッドで寛ぎながら聞いてくれていた。
予想通りくだらないなんて言われてすぐにその話は幕を閉じだけれど、ボスの元へ来るよう指示されるなり近づけば、何故か私はボスの腕の中にいた。
それだけでも驚きだというのにどうして私はボスと共に横になっているのか。
吐息のかかる距離にあるボスの顔が直視できず顔を埋めようにも、ボスの上半身は肌が露わになっていてこちらも直視できない。
一つ息を漏らすたびにウイスキーの香りが鼻を燻るもんだから、私の体はその度に紅潮ていく。
「恥ずかし…っていうか、あの、ボスってば…！」
何とか腕から逃れられないかと身を捩るも、しっかりと包まれている腕がある故に身動き一つ取れなかった。
顔を上げれば今にも触れてしまいそうな唇に私の心臓は収まりを知らない。
「何してんだカス。黙ってここにいろと言ったはずだろ」
動く体により一層腕の圧が掛かれば、もう白旗を上げるしか手はないようだ。
観念しながらも少しむくれる私に気づいたのか、ボスは珍しくご機嫌に口元を緩めて私を見ていた。
その綺麗な顔立ちに笑みを漏らされちゃ、それはもうたまったもんじゃ無い。
自身の外見事情を自覚し、この状況を分かった上でやっている確信犯なのかと疑わせるほどに私の胸は脈を速く打つ。
「…何だ」
「あ、の……やっぱりボスは…かっこいいですね…」
直視できないなんて言いながらもその笑みを見てしまったら、嫌でも目が離せなくなった。
悪くないと言うような笑みで鼻を鳴らせば、ボスは自然に瞼を閉じる。
少しして聞こえてきた寝息に腕から抜け出すチャンスを伺えば、何故わかったのかと驚きが漏れるほど力は強まった。
その圧に諦める道しか見出せなければ、私はボスの胸元に顔を埋めて目を閉じる。
お兄ちゃんとはまた違うその温もりは心地よく、私はそのまま意識を手放し眠りについた。
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年8月3日 14時
