《１１８》 ページ22
「はあぁぁぁ…」
「だから何回目だっつーの」
とある日の談話室。私は相変わらず好物のクッキーを片手に抱え、もう片手にはコーヒーを手にしながらテーブルに伏していた。
目の前には相変わらずベルがいて、私のクッキーをすぐ狙ってくるから溜まったもんじゃない。
かと言って溜息の理由がそれかと言われれば違う。
数日前に聞いた2つの話が私を悩ませ、そして溜息を吐き出させる。
「……だってさー…はぁ…」
「だーかーらー、何回目だよ！なんなんだっつーの！」
頭に軽く握り拳を落とされれば、話してスッキリしたい欲と話してはいけない危機感が私の中で火花を散らす。
しかし本当にベルの言う通りだ。一体何度目の溜息を漏らせばこの悩みは無くなるのだろう。
一つはまだ後どれくらいかの辛抱をすればいずれ居なくなるにしても、もう一つの悩みは頭の中から消し去ろうとしてもずっと留まったまま。
それどころか日に日に大きくなるその悩みが、どんどん自分の身勝手さを露わにしてくるからこそ余計に溜息が漏れる。
「…あー、のさ…考えないようにしてもつい考え込んじゃう時って、ベルならどうする？」
「俺は王子だから悩みなんてねーけど、ムカつく時はその辺のやつコロス」
「うん、だよね」
完全に聞く相手を間違えた。
何だよと不満そうに口を尖らせるベルを横目に、私は礼を残して部屋を出た。
誰ならこの話を真面目に聞いてくれるだろうかと考えながら歩く廊下。
レヴィは先日の件が結局跳ね馬の使用人達のせいだとわかったものの、少し嫌悪を抱いてしまった故にパス。
ルッスーリアは話こそ聞いてくれはしそうなものの、いずれ幹部内に広まりそうな予感を抱けばパスが懸命だ。
マーモンは間違いなくお金を請求してくることが予想されるから、そもそも選択肢に入れないでおこう。
…となると残るはボスしかいないけれど、くだらないと一蹴されて話が終わるような気もする。
ここで気付く兄の存在の大きさにまた私は溜息を漏らした。
今まで相談という相談などしてこなかったが為に、このような状況での頼り方がわからない。
何故私は妹なんだろう。
先日まではこの位置に優越を抱いていた癖に、今はこの位置がこんなにも憎いなんて、笑っちゃうよね。
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年8月3日 14時
