《１１１》 ページ15
重く鈍い音が部屋へと響けば、次にはガラスの割れる音。
扉の横で縮こまり被害を免れた私とベルは顔を見合わせるなり耳を塞ぎ、次への対策を取る。
直後に響渡る声は兄の怒りそのもの。
「…っンだこれはクソッ！！ふざけんじゃねぇ誰だぁ！！！」
こんなことをする人など先ほどの例外を除けば1人しかいないというのに、そもそもここはその主の部屋だというのも気づいていないんだろう。
苛立ちのあまりに周りが見えていない兄は私の存在にすらも気づくことなく奥へと歩みを進めている。
すぐにこの部屋の主を視界に捕らえれば、少しバツの悪そうに舌を鳴らしていた。
「ゔお”ぉいXANXUS…Aとベルが来ただろぉ。どこだぁ」
「てめぇの目はどんだけ腐ってんだ？」
質問に質問で返すのはさすがボスらしい。
しかしあまりにも当然のように私たちの存在を兄に明かすものだから、思わず声が出た。
咄嗟のことに口を塞ぎ息をも止める私に、ベルはふざけんなと私に突っ込みを入れる。
しかしもう何をしようが手遅れで、私の声をしっかりと耳に入れた兄はこちらを凝視し静かに足を踏み出していた。
「よおぉ…Aにベルぅ…さっきの件、どういうことか説明してもらおうじゃねぇかぁ…」
「……王子いちぬけっ！後は頼んだぜA！」
「ちょ！っと待ってベル！！！」
ボスにも軽い詫びを入れるなり物陰から姿を現しそそくさと部屋を出ていくベル。
一方の私はその場に置いてけぼりで、兄はベルではなく完全に私に狙いを定めていた。
頼みの綱であるボスは何も言わない。
それどころか早く出て行けと言わんばかりの空気を纏い、兄だけでなく私をも鋭く睨みつけていた。
今更ながらではあるものの、私も逃げ出そうと思い飛び出すが、やはり時すでに遅し。
待ての制止は私のすぐ後ろから。
がっしりと掴まれた頭は兄の手により強制的に後ろを振り向かされ、そこには満面の笑みで笑う姿があるものの、その笑みの奥には怒りが満ちている。
思わず殺されるのかと、この先を悟りただただごめんなさいを呟いた。
にやりとあげた口角。笑っているはずなのに、目だけは先程から全くと言っていいほどに笑っていない。
「まぁそう生き急ぐなぁ…。仕返しはたっぷり、してやらぁ」
「お兄ちゃんお兄ちゃん！！ごめんなさいってばぁ！！！」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年8月3日 14時
