《４０》 ページ44
「お、Aじゃん。なんか余計なやつも居っけど」
「おかえりA。スクアーロとはゆっくり話せたのかい？」
「うん！話せたよ！なんか跳ね馬のせいで疲れたとか言っててさ」
最初に感じた不安は、作り笑いがバレていないか。
兄に言われた一言で泣いていたこともあり目が赤くなっていないかが気になっていた。
跳ね馬は大丈夫と言っていたけれどこの男の言うことはイマイチ信用ならないと思っていたが、やはり私の勘は正しかった。
部屋に入るなり私の顔を見たボスは軽く眉を顰めていたから、きっと気づかれたんだろう。
それでも何事も無かったかのように無言でいてくれるボスに今は感謝する。
ベルとマーモンは気づいていないようで、2人ともホテルでの監視の厳しさに対する愚痴をボスに溢していた。
2人は世話焼きな部分もあるから、知られたらなんだなんだと根掘り葉掘り聞かれそうな上に、場合によっては兄のところへ押しかけ尋問とかを始めてしまいかねない。
そうすれば詮索を好まない兄の機嫌は余計に悪くなるだろう。
「それよりもボス！体の具合はどうですか？」
「…悪かねぇ。良い加減帰らせろとそこのカスに言っとけ」
睨む視線の先にいる私をつけ回す男。
ははは、なんて笑いにならない笑いをこぼす辺りまだ退院の見込みはないのだろう。
ボスはそんな跳ね馬を見て不機嫌そうに舌を鳴らした。
少しの時間、私も2人に混じって会話を楽しむ。
ボスは相変わらず無口だけれど所々で鼻を鳴らして笑ったりと、反応は見せてくれていた。
けれどそんな息抜きの時間もボスの欠伸で幕を閉じる。
気づけば外は茜色に染まり始め、輝き始める一番星。
「ボス、遅くまでごめんない。私達は帰りますね」
「次来るときはボスの欲しいものでも持ってこようか」
「肉と酒を持ってこい」
後ろからダメだと言う声が出て聞こえた気がするけれど、その声はベルの軽快な笑い声で消されていた。
私達はあくまでも聞こえないフリ。
ベル達はルッスーリアとレヴィの所には行く予定が無いようだったので一人顔だけでも見せに行こうと思ったけれど、ベルに連行されたために断念。
それならと、改めて兄の元へ行こうとするもやはり止められた。それでも私は歩を進める。
「本当にスクアーロのところに行くの？」
「機嫌悪いならやめとけってー。王子腹減ったし帰ろーぜ」
「うーん…でもやっぱり一言声かけてくる！先帰ってて！」
さっきの言葉の真意を知らずに帰るなどできなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まいたけ | 作成日時：2023年6月15日 18時
