《３９》 ページ43
「なんで付いてくるのよ」
「なんでってそりゃ、俺はAの監視役だし仕方ないだろ？」
感情が込められていない、適当な笑みを見せる跳ね馬。
兄に追い出され、いや、兄の一言で部屋を飛び出した私は1人になりたいというのに、この男はどこに行ってもつきまとってくる。
1人になれる場所と思い選んだ女子トイレですらもこの男はついてこようとするし、流石に止めて入り口で待たせてれば5分ほど経っただけでも大声で私を呼んできたときは一回殴ってやろうかと思った。
「なぁ、スクアーロのところ戻ろうぜって。俺らが騒いでたのが鬱陶しかっただけじゃねーかよ」
「戻らない。2度とくるなって言われたんだから、もう行かない」
何故兄が突然怒ったのかがわからなかった。
騒がしかったのならそう言えばいいだけだし、それで怒るだけならまだ話をしようと思えるものを兄は私に二度と来るなと言っていた。
怒ってるだけじゃなく、殺気すらも感じたほどに。
考える程に目に涙が滲んできて、今すぐにでも声を上げて泣いてしまいたい。
お兄ちゃんの馬鹿野郎って叫んでしまいたい位なのに、空気が読めてないのかわざとなのか、跳ね馬は私から離れようとしなかった。
しまいには私の目頭の涙を不意に拭うものだから、我慢の限界で手が出そうになる。
「触らないでよ。お兄ちゃんを助けてもらった恩はあるけど、それだけで気安く触られたくなんかない」
「あーもう、悪かった！だからその拳引っ込めろって！な？」
出来るのならこのままこの拳を下ろしてしまいたい。
兄が何故あそこまで怒っていたのかわからないもどかしさと、ずっと付き纏われるストレスからか、握る拳には力が籠る。掴んでいる跳ね馬のシャツはしわを作っていた。
ここで手を出せば間違いなく同盟ファミリーのボスへの暴力行為として問題が上がるだろう。
そうすると、管理不足だなんだとして、ボス達にも影響が出かねない。
そう思うと選べるものはひとつだけだった。
軽く舌を鳴らしながら拳をおろせば、跳ね馬は胸を撫で下ろしていた。
私はそれを横目に踵を返す。
1人になれないのであれば気がまぎれるところに行こう。
気分転換に来たなんて言ったら怒られそうだけれど、元々行く予定だったのだから大丈夫だろう。
「ボスのとこに行く。ついてくるのは仕方ないにしても、私の半径10メートル以内には入らないでね」
「じゅうめ…っ、！？んな無茶言うなって…」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年6月15日 18時
