《３５》 ページ39
波乱を呼んだリング争奪戦から数日が経った。
相変わらずヴァリアーが1フロア貸し切った階には黒いスーツを見に纏う男達が列を成す。跳ね馬の部下達だ。
何やら門外顧問がすぐには日本へ来れないらしく、まだしばらくはこの状態が続くと跳ね馬が言っていた。
原因は私達ヴァリアーにあるのは自覚しているが、完全に1人になれるのは風呂とトイレのみで、それ以外は当然にキャバッローネの人間が私たちの後をつけていた。
嫌でも就寝中ですらそれは続くものだから、まだ数日とは言えゆっくり体を休めるのは困難なものだった。
私の目の前で机に体を付している金髪の男、ベルフェゴールもその1人で、気怠げに不満を溢していた。
「マジうぜー。いつまで続くんだよこれ、王子の監視していいやつとかいねぇのに」
好物の牛乳をストローで吸ってはいるが、中身はどうやら空のようで乾いた音が聞こえてくる。
隣に座るマーモンは、小さな手で器用にお札を数えながら苦い笑みを浮かべていた。
かくいう私も、やることがなく机に伏して不満を漏らす一員だ。
付している顔の向きを変えればベルと目が合い、2人揃って大きな溜息をついた。
聞こえているであろう会話にも顔色ひとつ変えない男達を見れば、また漏れる溜息。
「まぁそうむくれんなって。監視を退かすのはムリだが、場所指定でなら外に出ても構わねーぜ」
「跳ね馬！お兄ちゃんは！？」
突如聞こえた声に私の体は飛び上がる。
リング争奪戦が終わり帰宅した後、少しして兄は高熱を出した。
感染症を引き起こしている可能性もあるため、様子を見ることなく即入院。
付き添いたいと申し入れても今の私達に許可は降りるはずなく、待機するよう言われていたために容体は分からずじまいだった。
「落ち着けって。大丈夫だって言ったろ？XANXUS達も目ぇ覚ましたぜ」
その言葉にほっと胸を撫で下ろす。
そこで…と、跳ね馬から続けて出る言葉に、私だけでなくベルやマーモンもイエスの反応を示した。
決まれば行動は早い私達。各々が外出する準備をするためにそれぞれの部屋へと戻る。
相変わらず跳ね馬の部下はついて回るけど、着替えようとしているのに出て行かないため跳ね馬に文句を言ったら、今後すぐ臨機応変に対応できるようにと、私の監視は跳ね馬がついて回ることになった。
「覗いたらお兄ちゃんにチクるからね」
「のぞ…っ！？のぞかねーよ！！！」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年6月15日 18時
