【REBORN!】だいすきお兄ちゃん (ページ36)

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《３２》ページ36

「誰に命じられたとしてもAがヴァリアーを抜けるなんざぁ俺が許さねぇ。
…その命がたとえボスさんからだろうが、なぁ」

ほら、生きてた。
全身は包帯で覆われ表情も良く見えないけれど、口角が上がっていることはわかる。
この怪我でも逃げ出す可能性があると思われているのか手足は拘束され、頭には拳銃が突きつけられていた。
すぐそばにはボンゴレの同盟、キャバッローネファミリーのボスである跳ね馬ディーノがいて、車椅子を押すのはその部下だろうか。
どんなに包帯が巻かれていようが、どれだけの警備がされていようが、私には関係ない。
震える足は一歩ずつ前へ踏み出し、気づけば自然と走り出していた。

「お兄ちゃん…っ！！！」
「い”…ッ！？A！痛ぇ！痛ぇぞぉ！！」

抱きつくやつ否や、兄は顔を歪める。
見た目の割に声は元気そうで、ならばと抱きつく腕に力を込めたら吠える兄。
近くにいた跳ね馬たちは落ち着けと言わんばかりに私を引き剥がそうとしていたが、私は離れるつもりがないためそれに抵抗した。
こうでもしないと兄の鼓動は聞こえないから。
今はただ、兄が生きていることをこの手で、この耳で、感じていたかった。

後ろではチェルベッロが大空戦の結果を言い渡し、
ボスの失格によりヴァリアー側の敗北は決まり、内容まではわからずとも、ベルとマーモンが何かを話しているのが耳に届いた。
横目で見れば、ボスは力を使い果たしたのか静かに目を閉じていくのが視界に入る。
お疲れ様、と微かに呟けば兄がなんか言ったかと反応した。

「なんでもないよ。…それよりも、あの状況からどう抜け出したの？」
「……あぁ、それはなぁ…」

軽く舌を鳴らし向かう視線の先には、満面の笑みでこちらを見る男がいた。
話を聞くとこの人の行動が元は山本武のためのものだったと言っていた。
たとえその行動が他の誰かのものであろうと、それがなければ兄は助かっていなかったかもしれない。
そう思うと自然と言葉が紡がれる。

「兄を助けてくれてありがとう。妹のスペルビ・Aです」
「どういたしまして。俺はキャバッローネの跳ね馬だ、隣にいるのは部下のロマーリオ。
スクアーロとはマフィア学校で出会ってからの仲なんだ」

お互いが差し出した手を取り合う。
今はただ、兄を救ってくれたことを素直に感謝しよう。