【REBORN!】だいすきお兄ちゃん (ページ31)

今日:16 hit、昨日:42 hit、合計:11,764 hit

《２７》ページ31

「……どーいう状況？」

小さなノック音の後、扉を開けて入ってきたベルは私達を見て口をあんぐりと開けていた。
なにがと思えば、擦り寄せる頬の持ち主がボスだったことに気付かされる。
溢れていた涙は驚きのあまり引っ込み、されるがままだったボスは顔色ひとつ変えずにベルを見つめて要件を聞いていた。

「飯どうすっかなーって。ボスとAの分こっちに運んだほうがいいのかわかんねーから聞きにきた」

出来れば一緒に食べたいと言いたげなベルの表情をボスも読み取っているのだろう。
ボスは私には好きにすれば良いとだけ残して部屋を出て行った。
正直言えば、昨日の今日で元気にいただきますなんて出来る気分ではなかった。
直接では無いにしろ目の前で鮫の餌食となった兄は鮮明に脳裏に焼きついている。

再会するまでの10年間だって兄が生きている保証はなかった。
けれど必ず迎えに来るという約束があったから、約束は絶対守ると言っていたから、きっと生きていると信じて待ち続ける事ができた。

「約束は…ぜったい、……守る、か…」
どこか引っかかった言葉を呟いたら体は自然と動いていた。
部屋の扉を勢いよく開ければ集まる視線。ボスすらも目を丸くしてこちらを見ていた。
私は空いている席へ腰掛け食前の挨拶を済ませれば、目の前のご馳走に次から次へと手を伸ばす。

—————なんでこんなに落ち込んでいたんだろう。
兄は今まで一度たりとも約束を破ったりなどしなかったのに。
できない約束はしない。それが私たち兄妹の何よりも大事な約束だった。
きっとみんなには馬鹿にされるかもしれない。笑われるかもしれない。
でもそうやって笑った人が、兄の最期を看取ったわけじゃないでしょう？
自分のこの目で、この手で、兄の息の根が止まるのを確認するまでは信じよう。
私は10年も生存可否のわからない人を待ち続けたんだから。

「ねぇみんな、私ね、お兄ちゃんは生きてると思うんだ。
誰がなんでそう言おうと私は信じる。私のお兄ちゃんは…スペルビ・スクアーロはめちゃくちゃしぶといからね！」

口いっぱいに頬張ったお肉を飲み込み、そう宣言した。
声にするだけでこんなにもつっかえていたものが落ちていくなんてしらなかった。

みんなはきょとんとしてたけど、心なしかボスだけは笑っていた気がした。