《２３》 ページ27
「……あれ、ここは…」
目を開けると見たことのない天井。なんだか前にも経験したようなシチュエーションだ。
それじゃあもしかして、なんて横を見れば相変わらずベッドに伏して眠る兄の姿。
私の手は兄の手にきつく握られていて、その様子から心配をかけてしまったことが伺えた。
リング争奪戦の真っ只中で、いつ兄の対戦が来るのかわからないというのに。
こんなところで寝させていては体調を崩しかねない。
そう思うと起こしてしまうのは気が引けたが、心を鬼にして兄の体を揺する。
「Aッ！！もう起きて大丈夫なのかぁ！？」
起きて開口一番に私の体の心配をしてくれる兄へ大丈夫と伝えれば、眉間の皺はたちまち消えていく。
ついでにと昨日の戦績を聞いていると、兄の声を聞きつけたのかベルとマーモンが扉を開けて入って来た。
兄同様、起きて大丈夫なのかと問われ私はそれに頷くと、ベルは口元をにんまりと緩めて私にリングを見せて来た。
「ねぇA、すごくね？王子起きたらリングゲットしてんの」
ベルの胸元で輝くリングは、歪な形から姿を変え正式なリングとなっていた。
おめでとうと伝えると、ベルはまた満足げに笑みを見せてくれる。
2人が来る直前に結果を聞いていたからさほど驚きはしないものの、ベルの体に巻かれた包帯を見れば無傷では済まなかったことが安易に想像出来る。
けれどそれならなおのこと、”プリンス・ザ・リッパー”の本領が発揮されたベルの戦いは見てみたかったと思ってしまった自分もいた。
しばらくは昨日の嵐戦の話をしながらみんなと談笑していたけれど、朝食が届いたというレヴィの声に一同が揃って部屋を出て行った。
私はまだ安静にしているようにときつく兄から言われてしまったため、ベッドで待機。
後ほど私の分を兄が持って来てくれるらしい。
今日の対戦カードは雨。いよいよ兄の出番だ。
兄が負けることなどないと信じて疑わないけれど、どこかざわつく胸が気になって仕方がなかった。
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年6月15日 18時
