《１４》 ページ18
「私がみなさんとお食事させて頂くなんてしていいわけがない！！」
「しつけぇぞぉ！！食えって言ってるんだから食いやがれぇ！」
かれこれ数十分、兄と私で睨み合い。
ことの発端はルッスーリアさんが準備してくれた朝ごはん。
私の分もあるからと声をかけて頂けたのはとても嬉しくありがたいけれど、部下の私が上司である幹部の方々と食事なんて恐れ多い。
申し訳ないけれどと断らせて頂き部屋の隅で立っていたところを兄に摘まれ強制着座させられたのがきっかけだ。
そんな食べろ食べない論争に終止符を打ったのは、ボスの一言だった。
「…るせぇ、黙って食え」
思わず兄と顔を見合わせ、二度瞬き。
その後勝ち誇ったようににんまりと笑う兄にベーッと舌を出し、言われた席へ着いた。
いただきます。と手を合わせテーブルを見ると、朝ごはんにしては豪華な料理の数々。
…が、ほぼ食べ尽くされていた。
「いつまでも喋ってんのがワリーんだぜ？」
「ッてめぇ！！俺の分はともかくAの分がねぇじゃねぇかぁ！」
まだ食事は終わっていないというのに、目の前で繰り広げられる乱闘。
どうやらヴァリアーでの食事は争奪戦というより戦争のようだ。
大人気なくムキになっている兄を横目に、残っていたパンへと手を伸ばすと、当たる指。
見ればボスも同時に手を伸ばしていた。
ボスが食べようとしていたことにも気づかずに食べようとしていたなんておこがましい。
残っているパンをボスに差し出せば、ボスはそれを無言で受け取る。
「むぐ…っ、！」
「テメェが食え」
押し込まれたパンは、口いっぱいに小麦とバターの香りを広がらせた。
突然のことにきょとんとする私を見て、ボスは鼻を鳴らして笑っていた。
いったいなぜ、なんて顔に出ていたのか、何も食べてないからと言っていたボス。
この状況を理解できていないのは私だけではなかったようだ。
私とボスを交互に見返す他4人。
ボスはそんなの気にも止めず、大きな欠伸をしながら食堂を出て行った。
「ゔおぉい…なにごとだぁ…」
「ボスが自分の食べ物を譲るなど…！」
「何かあったのかしら〜？」
「王子ちょービックリ」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年6月15日 18時
