【派生作品】さよなら前世またきて来世(修正中) (ページ4)

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「あ"〜……うまぁ……」

飲み過ぎで痛む頭を無視して一声。今ので飲み干した空のジョッキを机に置いて、そのまま顔を突っ伏した。ジョッキを置いた振動でその中の氷の音が軽やかに鳴る。これでもう3杯目。いつもなら1杯目から酔い潰れるはずなのに今日は不思議と酔う気配が来ない。下戸だからって侮ってはいけないな、とつい自分でも思ってしまった。珍しく今日は酒豪な俺とは真逆にまだ1杯目も飲み干していない先輩のラム酒はジョッキ半分のしか減っていない。まぁ先輩も下戸だから、あまり飲まないんだけなんけど。

今日だけ一本くらい良いだろう。煙草吸っていいですかと先輩に許可を貰っては胸ポケットから箱を出す。その箱から一本取り出して、紙巻を吸い、肺に溜まった煙をゆっくりと口から吐き出す…何回かその行為を繰り返して、火の弱まった煙草を灰皿に押し付けて消した。そしてまた顔を机の上で組んだ腕にうずくまった。

「…今日はやけにセンチメンタルだな」

そう言われて顔だけを先輩の方へ上げた。小食な先輩は枝豆を摘まみ、口に運んでからその目線を俺と合わせた。
やっぱり…俺の気持ちはこの人にはお見通しなのか。この人はいつも他人が感傷に浸っていると素早く気づく。今日の飲み会だって、普段は俺から誘うのに今回は向こうから誘ってきてくれた。人によってそれが鬱陶しく感じるかも知れないけど、俺にとってはとても有難く、そして深掘りせずに黙って付き合ってくれる事が何よりの救いだった。

「………今日なんですよ」

「今日がどうした」

「……俺が逃げてきた日です」

―「銃狙家」から。

日付でさえも気にしてしまうだなんて馬鹿みたいに情けない話だ。自分でもそう思う。でも意識せずにはいられなかった。嫌でも思い出してしまう。いっその事全部忘れられたら良いのだけど…それがあの時からずっと人生の枷になっているから…多分、忘れることは一生無理なんだろう。