【派生作品】さよなら前世またきて来世(修正中) (ページ12)

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「10発中、9発は的中……」

……1発、されど1発。たかが1発を外した。

殺風景な射撃場でピピッとタイマーの無機質な音が鳴り響いた。右手に持つ、銃弾が空になった軽いリボルバーを下げれば、ドクソがそう告げた。

不味い…リボルバーを持った右手があまりにも恐怖で震える。その震えは止まるどころか、激しくなっていき、思わずリボルバーを落としそうになる。慌てて右手首を左手で力強く抑え、後ろで見物していた義父さんと龍鬼さんに体を向けた。

「…1発外すとは所詮こんなものか、佐仕舞
……もういい、貴様の実力は分かった
今回の"仕事"は乱撃にやらせる」

腕を組み、壁に背もたれていた義父さんは再び立ち上がるとそう一瞥して俺の傍を横切った。
その鮮血の如く赤黒い瞳は冷酷だった。その見下してた目は最初から俺に期待も何もしているわけじゃないのは分かっている。
……俺でも日に日に段々と実力が落ちてきているのは分かる。右手が拳銃を握ることさえ受け付けなくなってきているんだ。

でも、あんな"仕事"を健気で純粋な弟にやらせる…？……いくら血を受け継ぐ実の息子だとしても駄目だ、それだけは、義弟の手を汚すわけには…。

「ま、…待ってよ義父さん！
まだ……まだ乱撃には"仕事"させないで……俺が乱撃の分までやるから、お願いします…」

「……兄貴、まだ乱撃の4歳の誕生日までは待たないか？
それに、まだ幼子だ……いくらなんでも苛酷すぎるだろ」

「……何を言っている、もう4歳(・・・・)だ」

俺の必死の願いと意思を汲んだかのように義父さんの後ろにいた龍鬼さんは部屋を出て行こうとする義父さんの肩を掴んで止めた。義父さんの赤目と龍鬼さんの青目がお互いの目を見つめ合って無言の時間が続く。

「…………勝手にしろ」

しばらく見つめ合った後、義父さんは肩の手を振り払い、振り返ることも無く部屋から出て行った。その後に続いた龍鬼さんは憐れむように見つめ、一言「ごめん」と謝り、扉を閉めた。

乱撃の誕生日まで残り3ヶ月。
そして個性が発現するまで残り3ヶ月。

……それを楽しみにしている乱撃には申し訳ないが、どうか発現しないでくれと願う。
せめて殺傷能力のない個性であってくれと願う。
お願いだから……ただただ無力な俺にはそう願うしか無かった。