【ハイキュー】酔 わ せ て 【短編集】

ベルモント - 影山飛雄 ページ9

飲み会って苦手。

それが元カレがいる場所ともなればなおさら。


「Aが飲んでるのなに？」
「ベルモントだよ」
「へー…度数高いの飲んでんね。潰れないようにしなよ。二次会もあるんだから」
「ありがとう」

気遣ってくれた友達には申し訳ないけど、二次会に行くつもりは正直ない。


＿＿＿『お前って色気ないよな。女としての魅力感じない』


そう言って私をフッた相手は、賑やかな輪の中で騒いでいる。

(…そんなの承知で付き合ったんじゃなかったの？)

なんて、今更言っても遅いんだけど。



「あの。大丈夫っすか？」
「……え？…あ」

酔いと落胆でうなだれていると、不意に上から声をかけられる。
見上げた先にいたのは……


「…影山くん」

後輩の影山くん。
サークルの中でも優秀というか、とにかく技術がすごい子。
(…だけど、イマイチ人は掴めないんだよなぁ)

なんて思っていると、影山くんは私の隣に腰をかけた。

「…あの人…先輩の彼氏？でしたっけ」
「…あ」
(……そっか、見てたから)

後輩に心配してもらう自分が情けなくて、思わず苦笑を浮かべる。

「元、ね。もうフラれちゃった」
「…そうっすか」

興味があるのかないのか、影山くんは私の元カレをじっと眺めるだけ。

(……影山くんって、淡白そうだな)

もしかしたら私の愚痴、軽く聞き流してくれるかな？



「私ね、色気がないんだって」
「…色気？」
アルコールの香りに任せて、首を傾げる影山くんに構わず話を続ける。

「女としての魅力を感じないって、言われちゃった」
「はあ」
「…わかってたつもりだったんだけど、なんていうか。
素直に言われると傷つくなぁ」
「…」


下を向いたら涙が溢れそうだった。
なんの涙かは今さらわからないけど、でも、何か込み上げてくるものがあって。


「…なんて！影山くんに言っても困らせるだけだよね。ごめ…、」
「色気とか女としての魅力とか、そういうのは俺わかんないっすけど」





影山くんは淡白だ。


きっと私の愚痴なんて、深く考えてないし
そもそも私のことなんかきっとどうとも思ってない。





「俺はAさん、十分いい女だなって思いますけど」




だからそういうこと言われると

なおさら涙が溢れてしまうのに。






ベルモント
カクテル言葉【やさしい慰め】

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