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アプリコット・フィズ - 黒尾鉄朗 ページ30

久しぶりに帰ってきた東京。

たまたま、彼と再会した。



「…へえ。じゃあねーちゃん、定職就いたんだ」
「うん。さすがにいい加減就かないとね」


(定職に就いたせいで、最近は彼氏と会う時間が取れてないんだけど)
…ていうか、向こうが今日は無理って連発するのが悪いんだけどね。

頭の中では愚痴が浮かぶけど、無邪気だった彼にそんなこと言えるわけなくて。


「…テツ、やっぱり大人っぽくなったね」
「……まぁ、9年ぶりだしな」

テツが東京に引っ越してきたのが、12年前とかそれくらいになるのかな。
その時私は近くに住んでいて、さらに小学校も一緒だったから、結構仲良くしてた。



「私が引っ越すんだぁって言った時のテツの顔、かわいかったなぁ」
「やめろよ…仮にも今は190センチ近い男なんだから」


結局当時は、彼とは2、3年しか一緒にはいられなかった。
私が引っ越すってなったからだけど、テツはすごく寂しがってくれて。


「…でも、会えてよかった」
「…ん、俺も」




高校では部活の主将をやってたとか
春高も出場を果たしたんだとか


それだけ聞けば、彼ももう立派な成長を遂げたんだなって思う。

でも


「……なぁ、ねーちゃん」
「ん?」



「…ねーちゃんってさ、彼氏いんの?」



私にとっての彼は
いつになっても幼いままで。






「…そんなこと聞いてどうするの」

「可能性があるかどうか知りてえの」

「なんの可能性?」


微笑み返しても、テツは真剣な表情のまま私を見据える。



「…まだガキだと思ってんのかよ、俺のこと」
「そうは言ってないけど」


でも、やっぱり自分より年下なのは事実だから

結局、そういうふうに見てしまってるのかもしれない。



「俺、もう21なんだけど」
「まぁ…私が23だもんね。そうだろうね」

素っ気なく返せば、テツは私の右手に自分の指を絡めた。




「…いつになったら俺のこと一人前の男って見てくれんの?」




揺れる黒い瞳と、
耳をくすぐる甘い声。





「なあ、A。好きって言って」





落ちちゃだめだ。


アプリコット・フィズ
カクテル言葉【振り向いて】

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李玖(プロフ) - カクテル言葉なんてあるんですね、初耳でした!やっぱ二口しか勝たん!!! (2021年4月26日 21時) (レス) id: 2cebe15e55 (このIDを非表示/違反報告)
凛々 - カクテル言葉ってカックイーですね! 私は西谷さんも良いけどツッキーが一番好きです。(リエーフとかも見てみたい)長文すみません。面白かったです!頑張ってください! (2019年8月21日 21時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
闇黒星(プロフ) - ○○言葉みたいなのを知ってる人ってなんかあこがれますね!面白いです!これからも頑張ってください! (2019年8月11日 19時) (レス) id: be843ec937 (このIDを非表示/違反報告)
は お(プロフ) - 引きこもり桜花さん» ありがとうございます!面白いという感想がほんとうにうれしいです。激励のお言葉も頂きまして本当に感謝です! (2019年8月10日 0時) (レス) id: 80e348f75a (このIDを非表示/違反報告)
は お(プロフ) - アンズさん» そう言っていただけて嬉しいです泣 新しいやつも終わるときに惜しまれるようなクオリティを目指して頑張りますので、もしよろしければ今後も応援していただけるとうれしいです、、! (2019年8月10日 0時) (レス) id: 80e348f75a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:は お | 作成日時:2019年7月25日 10時

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