スティンガー - 天童覚 ページ11
仕事のミスを忘れるための一人酒。
自分にとっての初ミスで、しかも今日はまさかの飲み会の日で、もちろん気分が乗るわけもなく、適当な言い訳をつけて抜けてきた。
「……はあ」
深いため息をつき、手元に残るカクテルに手を伸ばした時。
「仕事で失敗して一人酒で忘れたいから飲み会は辞退。一人酒もしたはいいけど結局頭んなかには失敗のことしか浮かばない…ってとこかな？」
(……え？)
全部を見透かされたような言葉。
知り合いは誰もいないはず。
どうやらその声が聞こえたのは、三個の空席を挟んだ隣。
「…あ、図星？悟ったり〜」
(……なに、あの人)
視線の先にいるのは、赤い髪をしたどこか掴めない雰囲気の男性。
でも正直容姿なんて今はどうでもよくて、それよりも気になることが山ほどある。
なのに、先に口を開いたのはその人だった。
「そりゃ忘れられるわけないよねー。さっきから度数の低いやつばっかチョイスしてんの、それはワザとなの？」
「…」
「本気で酔いたい奴が選ぶもんじゃねーわ」
低く吐き捨てたかと思えば、その人は自分の目の前にいるバーテンダーに向き直った。
「っ……余計なお世話です！！」
に、と目を細める仕草に腹が立って、私は手元のカクテルを一気に飲み干した。
(なんなの、お節介もいいとこでしょ…！？)
イライラを解消するために来たのに、まさか余計にイライラする羽目になるなんて。
(もう嫌…あんな人無視して、もっと飲んでやる)
そう心に決めた時。
さっきまであの人の前にいたはずのバーテンダーが、いつの間にか私の目の前に来て、さらに琥珀色をしたカクテルを差し出して来た。
「…え？」
「あちらの方からです」
(…は？)
バーテンダーが手で示したのは、さっきの赤い髪の人。
その人は、もう帰り支度をしているようだった。
「っあの、なんなんですか、これ」
「プレゼント？本気で酔いたいならそんぐらいいかないと」
そう言って席を立つと、さらに私の元へ歩いてくる。
「見たとこさ、アンタ根っこからの真面目人間でしょ？
そんな人が酒がぶ飲みしてるとこ、ただ一人知ってる男がいる状況って……燃えない？」
「っ……」
耳元に響く低音に、思わず身を引いた。
「俺、基本この曜日のこの時間帯にいるからさ。また来週、ゆっくり話そうよ」
怖いのに、嫌なのに。
「楽しみにしてるネ」
なぜかその瞳から
目を離すことができなかった
スティンガー
カクテル言葉【危険な香り】
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李玖(プロフ) - カクテル言葉なんてあるんですね、初耳でした！やっぱ二口しか勝たん！！！ (2021年4月26日 21時) (
レス) id: 2cebe15e55 (このIDを非表示/違反報告)
凛々 - カクテル言葉ってカックイーですね！ 私は西谷さんも良いけどツッキーが一番好きです。(リエーフとかも見てみたい)長文すみません。面白かったです！頑張ってください！ (2019年8月21日 21時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
闇黒星(プロフ) - ○○言葉みたいなのを知ってる人ってなんかあこがれますね！面白いです！これからも頑張ってください！ (2019年8月11日 19時) (レス) id: be843ec937 (このIDを非表示/違反報告)
は お(プロフ) - 引きこもり桜花さん» ありがとうございます!面白いという感想がほんとうにうれしいです。激励のお言葉も頂きまして本当に感謝です! (2019年8月10日 0時) (レス) id: 80e348f75a (このIDを非表示/違反報告)
は お(プロフ) - アンズさん» そう言っていただけて嬉しいです泣 新しいやつも終わるときに惜しまれるようなクオリティを目指して頑張りますので、もしよろしければ今後も応援していただけるとうれしいです、、! (2019年8月10日 0時) (レス) id: 80e348f75a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：は お
| 作成日時：2019年7月25日 10時
