へろーまいえんじぇる【2j3j】

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剣持side




口論の後、ソファで眠りについたはずだ

ふわふわとした背中の温もり、首まで覆う柔らかい感覚に

自分は今ベットにいることが分かった


「ぇ」


「あれ、起きちゃったか」


目を開け1番に飛び込んできたのは、輝く赤だった

鼻と鼻が触れそうなほど近づく吸血鬼に息を飲む

額には前髪ではなく、吸血鬼の手の感覚があった

額に当てられた手からは、さほど温もりを感じなかった

吸血鬼は僕の頭を一撫でして目を細めて笑い、ゆっくりと時間をかけて離れていった


「(ビッッッッくりした)」


心臓がバクバクと不定期に音を立てる

健全な男子高校生ならば誰だってこの状況で動揺しないわけが無い

特に何をしたという訳でもないのにあらぬ想像ばかりが働いて顔が熱くなる

不可抗力だ


「もう朝になったな」


「え…あ、そうですね

その、もう空腹は収まったんですか」


「ん？あぁ、そうだな

剣持少年のおかげですっかり元気だよ

君の血は美味しかったから、これで何年でも耐えられるかもしれないなぁ」


顔を綻ばせて笑う吸血鬼に、更にドクンと心臓が動き出す

たった一度の衝動でここまで人の心は変化するのだ、恐ろしいものだ


「あ、運んでくれてありがとうございます」


「運んだのは私じゃなくてラドだよ

そこの虎」


指を刺された方向を見ると、僕のすぐ真横に白い虎が鎮座していた

驚いて飛び跳ねそうになるが、純粋な眼に母性を感じ

ゆっくりと手をかざすと、それに呼応するように頬を擦りつけてきた


か わ い い


「可愛いだろぉ？

だから剣持少年は怖がりすぎだと言ったのに」


「誰でも怖がりますよそりゃ

一般人の常識舐めんなよ」


「おぉ怖い怖い」


朝ごはんを用意してくると言って、吸血鬼は階段を降りていった


「あ、そうだそうだ」


吸血鬼は扉の端から顔を出して


「君のお母さんも好きだったけど

今の剣持少年も私は好きだからな？」


と、不敵に笑って言い逃げしていった


「……？ん？

………………はぁ！？！？」


ラド、と言ったか

ラドは驚く剣持を尻目に

嘲笑うように扉から飼い主を追いかけて言った

ペットは飼い主に似るらしい



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