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するとお兄さんがまたギュ…と薄くて形のいい唇を引き結んで、泣く直前の幼女みたいな顔をしたので、私は大混乱で敬語ガタガタの頓珍漢な言葉を吐いた。
「ハェ、や、すみません、え?ホントに…え?な、何が…?どこが気持ち悪い…?えっ、あ!私の顔が…ってコトっ…すか?!」
「はっ!?いや!違!オレ!オレの顔が!ぶ、醜男で気持ち悪いってことで、Aさんのことじゃ…!」
「あ、え…?」
「っ…」
「…」
「…」
一通り二人でアワアワしていた最中、シンと場が静まり返る。こういうの、「天使が通った」いうんだっけ。
それからお兄さんは、泣き顔から一転、「…はは、」と眉を下げて控えめに、されど眩しそうな顔をして笑った。や〜っぱカッコイイんだよな。
「はじめてオレの顔見た時も、他の人と全然違う反応してたよな…優しいな、Aさんは」
「へ、へへ…?アレ、というか私の名前…」
「あっ…ご、ゴメン!名札に書いてあったから、それで…、ゴメン。オレなんかが…」
「ぜ、全然大丈夫ですよ名前くらい!ホント気にしないでください!お客さんにもよく呼ばれますから…!」
あああ…お兄さん自己肯定感がバカ低い…こんな、こんなにイケメンなのに…クソみたいな世の中のせいで…世直し一揆起こすしかねえべや…
余りにも健気かつ切ないお兄さんの様子に、この世界の醜男(イケメン)の迫害具合を思い出して私はちょっと泣きそうになった。イイイイイ幸せになってほしいお兄さん。
「…店員が、お客様に名前覚えてもらえることは良いことですし、私も名前覚えてもらえるの、やっぱ嬉しいので」
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Kyoro丸。(プロフ) - 超面白いですね(笑)主人公の性格が癖強くて好きです(笑) (2023年2月11日 13時) (レス) @page13 id: ea6fdef67d (このIDを非表示/違反報告)
icchy(プロフ) - はじめまして!めっちゃおもしろくてハマりました✨是非どんどん続編期待してます!! (2023年1月9日 21時) (レス) id: 1c7a9fb991 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怪人百面相 | 作成日時:2023年1月6日 15時