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「……こ、九井さんのこと…悪く言ってきたから、ムカついて…言い返したら、向こうが逆上してきて…。…」
「!」

説明してたらまた涙で視界が滲んできた。
やっぱり悔しい。ズッ、と鼻を啜り、下を向く。「私、間違っとことしてない…」と子供みたいなことを言って泣いていると、向かいのソファがギッと音を立てた。垂れた前髪の向こうで九井さんの足が見えて、こっちにやってたのだとわかった。チラ、と顔を上げると、九井さんは私の前に屈んで、眉を下げて微笑みながら私の頭を撫でた。

「そっか。…ありがとうな、オレのために…」

微笑んだその顔は、やっぱり綺麗だった。
そして「とりあえず、病院まで送る」と言うと、立ち上がった。

「立てるか」
「あ、ハイ。…ぐ、っ」
「痛そうだな。…!」
「…?」
「服の、ソレ」

私も呻きながら立ち上がったその時、九井さんがまたも目を見開いた。ソレ、と言ったのは多分服についた革靴の後のことだろう。私が説明をする前に、九井さんはさっきの天女の如き微笑みから、いつか見た『無』の表情に変わり、そのまま私に質問を投げかけた。

「…蹴っ飛ばされたって言ってたが…直接腹を狙われたのか」
「あ…ハイ」
「どこでやられた?」
「え、えと、南側のエレベーターで」
「誰だったかわかるか」
「…多分、営業の方、です」
「そうか、わかった。ありがとう」

スン…と無の表情のままの九井さんが恐ろしい。やっぱ美人の真顔迫力あって超怖い。わかったって何が…?ありがとうって何…?いてもたってもいられず、特に言うことはないのに「あの…九井さん?」と名前を呼んだ。
すると九井さんは、「大丈夫。病院行こうな」と言葉を挟む余地無しな感じの笑みをパッと浮かべた。…何となくコレ、怒ってるなと察知した。

その後、私は無事九井さんの運転(車に疎い私でもわかるくらいの高級車だった)に近くの病院へと送り届けられた。

帰りは悪いが用事があって迎えに行けないから、とタクシー代と、そこにさらに治療費までボン!と出されてビビってしまった。
流石にそこまで受け取れない、と言うとまた子犬みたいな目で「経費で落とすから…」と言いくるめられてしまい、私は結局受け取ってしまったのだった。

ウーン、意志が弱い。

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Kyoro丸。(プロフ) - 超面白いですね(笑)主人公の性格が癖強くて好きです(笑) (2023年2月11日 13時) (レス) @page13 id: ea6fdef67d (このIDを非表示/違反報告)
icchy(プロフ) - はじめまして!めっちゃおもしろくてハマりました✨是非どんどん続編期待してます!! (2023年1月9日 21時) (レス) id: 1c7a9fb991 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:怪人百面相 | 作成日時:2023年1月6日 15時

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